第65話悪に挫けたような複雑な気分
『カランコロンカラン』と懐かしい音が鳴る扉を開けて古き良き喫茶店風のレストランへと入る。
このレストランの設定は、真奈美の気に入っている三毛猫キャラクターが働いている店というものらしい。
そのためウェイトレス等の来ているコスチュームはどことなく真奈美の気に入っているキャラクターの雰囲気が出ており、また部屋の内装にも三毛猫のキャラクターを彷彿とさせる小物等のがおかれて細かな部分にまで拘りが見える為本人不在ではあったもののそのキャラクターの働いているお店であるという事は伝わるような作りとなっていた。
因みに料金設定はこの遊園地も他の遊園地と同じく平均的な価格より五割増し前後である。
飲食持ち込み禁止にする施設の飲食類の価格の高さはどうにかならないのかと、お金の有難みを再確認している真っ最中である私はそう思わずにはいられない。
そして、ハンバーグ定食に二千五百円以上使うくらいならば自分で作った場合何食分になるのかしら?等と思ってしまいどうしても一番安いハーフうどんへと選択肢が狭められていく。
これは無駄遣いしたくないとかいうのではなくお金をこの店に落としたくないという心理なのだろう。
しかしながら結局はこの店の売り上げは遊園地へ、そして私たちは入園料とフリーパス、これから少ししたらお土産も買うつもりである為一食分の代金を落としたくないという気持ちが全くもって意味が無い的外れな行動であると分かってはいるのだが、理屈ではないのだ。
本音を言えば飲食持ち込み禁止にして高く設定するやり口が気に入らない為空腹を我慢してでも一円たりとも落としたくないというのが本音である。
そんな意味の無い事で無駄に思考を巡らせていると元夫が呼び出しボタンを押していたらしく三毛猫の猫耳カチューシャと尻尾を付けたウェイトレスさんが満面の笑みでオーダーを聞きにやってくる。
「このお子様Bセット一つと、ハンバーグ定食を二つ、あとドリンクで麦茶を二つお願いします」
そして夫は私の希望も聞かずにオーダーを済ませるではないか。
「このままだとハーフうどんとか言いかねない雰囲気と力強い目線でメニューのハーフうどんを睨んでいたから、お前の好物であるハンバーグの定食を勝手にオーダーした」
「あ、ありがとう」
なんだか気を使わせてしまったみたいで申し訳なく思うのだが、何だか悪に挫けたような複雑な気分である。
「覚えてないのか?」
「………何を?」
そんな私を見て旦那が声をかけて来るのだが、何の事を指して言っているのか見当がつかない。
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