第63話チェロス様

ここの遊園地は番いのネズミが出る遊園地ではなく番いのカモがマスコットも遊園地で、私が小さい頃はそこそこ流行っていて五分程の番組を持っており子供達とテーマソングでダンスするだけの映像を流していたのだが一度経営難から閉園した後新たなオーナーが買い取り試行錯誤に何とか頑張っているといった感じの遊園地である。


その為子供向けというよりかは若い女性向けにインスタ映えしそうな物が明らかに増えているのだが乗り物自体はその殆どが当時のまま残っており真奈美も問題なく楽しめる内容である。


そして入り口にある長い長いエスカレーターで丘の上を登って行き、遊園地内へと真奈美を元夫と挟んで入園する。


真奈美の両の手は私と元夫に繋がれており今日何度目かの、ブランコみたいにしてとせがんで来るので限界なのを無理してブラブラと宙に浮かせて揺らしてあげると満面の笑顔でもう一回とせがんで来る。


あ、これ終わらない奴だ。


と子供故の無尽蔵の大量と無限催促のコンボが始まったと思ったのだが今日の私は一味違う。


何故ならば遊園地に来ているのでそんな何ちゃってブランコよりも面白いアトラクションの宝庫なのだ。


それこそコーヒーカップやメリーゴーランドから子供用のジェットコースターに船に乗り水の上を流れて行きながら備え付けの銃で敵をやっつけるアトラクションまで選り取り見である。


そう、いつもと違い終わりが間近だと思えるのは心の余裕が違う為もう少しだけ真奈美の為に頑張ってみようと思える。


真奈美一人で大の大人がこれなのだ。


本当、保育園の先生方には頭が上がらない。


そんなこんなで元夫と二人で真奈美をブラブラとさせながら歩いていると入り口付近のお土産コーナーを少し抜けた所でチェロスを販売しているのに気付いた。


勿論真奈美姫は食べたいととのご要望である。


そして家臣である私達はかぐや姫の欲した財宝の様に真奈美姫へと献上品を差し出すとご満悦にチェロスを食べ始める。


その間は当然私達と手を繋いでいるとチェロスを持てない為、やっとのことブランコ地獄から解放される。


チェロス様々である。


そんな事を思っていると元夫もチェロスを購入したかと思うと、買ったばかりのチェロスを半分に折り、片方を紙ナプキンで持ち手を作り私に渡して来る。


「さ、流石にコレは半分お金払うむぐぅっ!?」

「良いから食え。それに今日一日は俺の奢りだ。そして真奈美の思い出に母親だけチェロスを食べなかった思い出として残させない為にも食べてろ」

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