第58話複雑な気分
なんだかんだとクズる時もあるのだが基本的にはチャイルドシートは嫌がらず、寧ろ率先してチャイルドシートへ乗ってくれるのでありがたい限りである。
恐らく真奈美の中ではチャイルドシート=自分専用の特等席であると思ってくれているのであろう。
「では、行こうっ!」
「いこーーっ!!」
そして元夫、そしてそれに続き真奈美の号令と共に車が動き出すのであった。
◆
北川を俺部屋で住まわせる事が決まった翌日、俺は仕事を早上がりした後デパートで高級生菓子を買うと、高速で二時間程車移動してとあるファミレスへとスーツにネクタイ姿のまま来ていた。
「コッチです」
恐らく俺がうろちょろしていたのが目立っていたのであろう。
写真でしか見たこともない男性が俺の方へ向かって声をかけてくれる。
「いきなり呼びつける様な形を取ってしまって申し訳ございません。コレは一応今回の件のお詫びの印として受け取って下さい」
「本当だよ」
「すみません」
その男性は北川の元夫であり、同じくスーツにネクタイの姿をしており、今まで仕事をしていたであろう事が窺えてくる。
仕事で忙しいにも関わらず本当、有難いやら申し訳ないやらで何だか複雑な気分である。
その男性の顔は写真で見るより少し痩せ細って見えた。
「と、言いたい所だがコレは俺の責任でもある。ましてやこうしてわざわざ遠い場所から私の撒いた種で出た芽を刈らさせる様な真似をして申し訳ないと思っている」
そして始まる謝罪合戦を何往復かした後、一応名刺交換をして事の顛末を話す。
勿論俺が北川の元彼氏と伝えた時は少し眉根にシワが寄った様な気がしたのだが、婚約者に浮気をされてからはEDを発症してしまった事を話すとココでは何だという訳で個室の居酒屋へと場所を移す。
とりあえず二人共生ビールを最初に頼み、乾杯した後元夫さんが口を開く。
「ぶっちゃけ、この距離をわざわざ来てくれた時点で私は君の事を信用するよ。まぁ惚れた女すら見極める事が出来なかった男何を今更と馬鹿にして貰って構わない」
「それは僕も同じですよ………」
「ま、要はここまでの誠意を見せてくれたのだ。はなから騙すつもりで来たのであれば最早天晴と称賛しよう。そもそもの話騙すつもりであるのならばここまで来る事にメリットっというメリットが思いつかないし、私の信頼を得たいと言われても得たところで何になる。彩と俺は赤の他人だ。そう君と同じ元彩の男だった一人に過ぎない訳だ」
そこまで一気に話すとぐびっとビールを流し込みおかわりでコーラを注文していた。
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