第53話まだまだ時間は掛かりそう

しかしながら手羽元をそのまま食べた方がチューリップにするよりも倍美味しいと思うのは何故だろうか。


二つとも味は同じで単なる錯覚なのだろうか?


分からないのだが兎にも角にも私は手羽元にそのままかぶりつく方が好きなのは間違いない。


若い頃であれば味など二の次で食べ易さからチューリップ一択であっただろう。


そう思えてしまう程には私も歳を取った。


最近そういう様な、若い頃と今とで変わってしまった事を良く思う様になった。


真奈美の送り迎えやパートをしているからか体力は若い頃よりもある気がするのだが、それを若い頃の様に上手く使いこなせず結局は疲れてしまったり、若い娘達の流行っているものや使っている言葉で全く分からないものが少しずつ増えて来たり、お姉さんと呼ぶニュアンスが明らかに若い娘に対して使うニュアンスでは無くお姉さんという言葉の裏におばさんが見え隠れするニュアンスで呼ばれるようになったり、目の焦点が合いづらくなったり、思い返してみればキリが無い。


それだけ歳を取ったという事なのだろうが何だか寂しく感じてしまう。


歳を取る事を寂しいと感じてしまう最大の原因が何なのか、分かっているからこそより一層寂しいと感じてしまう。


そう一人感傷に浸りながら真奈美をお風呂に入れ、同時に洋服と保育園の制服であるスモックを手洗いしていく。


今日も真奈美は元気いっぱい保育園で遊んで来たのであろう。


砂がいっぱい出てくるのでポケットの中もひっくり返して念入りに洗って行く。


寧ろだからこそ洗濯機で洗えないのだが、子供はこうして泥で汚して帰るのが仕事である為せっせと洗って行く。


その間の真奈美はいつも通りアヒルのおもちゃで遊んでいて静かなのが有り難い。


今日は洗濯用の残り湯がある為いつも以上に遊びに真剣だ。


そして一通り砂を落として洗い終えると、洗濯機に入れると今度は真奈美の身体を洗って行く。


身体には目立つ痣も無いのでイジメられているとかは無さそうでとりあえずは一安心である。


寧ろ真奈美の日常会話からまーくんから他の女の子の名前からと少しずつ出てくる名前が増えて来ているので上手くお友達も出来て楽しくやっているみたいで何よりである。


因みに真奈美のまーくんの評価は未だに底辺で、たつやくんもただの友達の内の一人としての認識しかしていないみたいなので二人とも頑張れと思ってしまう。


しかしながらかくいう私も初恋はかなり遅かった為真奈美のこの感じを見るにまだまだ時間は掛かりそうだなとも思う。

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