第49話小太りでは無くなってしまう
それでもこの小太りマダムからすればアルバイト自体が初めての経験でありとても楽しんでいるみたいで、その楽しく働いている姿を見ると私まで楽しくパート業を過ごす事ができるという点ではとても感謝していたりする。
それに、スマートフォンが鳴り止まない等と言った粘着質な箇所さえ目を瞑れば普通に良きママ友であると言えよう。
逆に言えばだからこそその粘着質な部分さえ無くなってくれればと思わずにはいられない。
「そうなんですねっ!私の所の真奈美も今では大好物で────」
「そうなんですのっ!?いい事を聞きましたわっ!!これはもっともっと練習しなくてはっ!」
揚げ物を揚げつつ、更に考え事をしながら返答してしまったからであろう。
言わなくても良い事を言ってしまい小太りマダムへ良質な餌を与えてしまった事を言ってから気付いてしまう。
まだ私たちに実害が無いと思われる内容である為マシなのだが、小太りマダムの旦那様やまーくんには悪い事をしたと思わざるを得ない。
いや、まーくんからすれば逆に嬉しい事なのかもしれない為またもやまーくんの一人勝ちという展開なのかもしれない。
しかしながら小太りマダムの出勤は今日で四日目なのだが作業着を着ているその姿は未だに違和感しかない。
白い長靴に白い割烹着、白い前掛けに白い帽子に白いマスクを付けたその姿はどこからどう見ても給食のおばちゃんにしか見えないのにも関わらずどこからともなく漂い始める隠しきれないリッチ感。
その姿を見慣れる時が来るのかな、と思ってしまうのは内緒である。
そんな小太りマダムの教育係が私に任命されたのは教える事により予習復習にもなるからだと言うのだが、明らかに違和感しかないかつ私の知り合いだと言うこの小太りマダムを押し付けただけではないと思いたい。
そんな私はというと通い始めて二か月近く、ようやっと唐揚げ以外の料理も教わり今では揚げ物全般を任される様になり天ぷらを教わっている所である。
この二か月間、お昼休憩で頂ける賄もこの天ぷらを覚える事ができればようやっとお昼の賄揚げ物の呪縛から解き放たれる事ができる為一日でも早く覚えようと必死である。
流石に二か月間パート時のお昼ご飯のおかずが揚げ物というのはそろそろ年齢的にも厳しいものが出てきていたのでその呪縛から解放されるのだと思うと心躍る様だ。
そして小太りマダムなのだが賄分にプラスα自腹で(と言っても従業員割引はされているのだが)唐揚げを倍プッシュしている為覚える速さもさることながら小太りが小太りでは無くなってしまうのではないかと思ってしまう。
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