第50話庶民でもよく聞くものばかり

「しかしながら、庶民も大変ですわね。月々三十万から五十万程度で生活して行かなければならないなんて。わたくしでしたら十日も生きれませんわ」

「でしょうね。エンゲル係数家計の食費だけ見ても優に三十万は軽く超えそうですものね」


そして小太りマダムは私と一緒にお昼休憩を取ると他人が聞いていれば嫌味の何物でもない事を吐いてくるのだがこの小太りマダムはこの事が嫌味すら思っていなく、ただ純粋な好奇心から聞いて来ている為たちが悪い。


ただの嫌味であるのならば同じく毒を込めた嫌味で返す事が出来るのだが、好奇心から聞いて来ているだけである為毒を抜いた嫌味でかなーり遠まわしな表現でもって同じく聞く人が聞けば嫌味になる言葉で返す。


「そうですわね、食費だけ見ても一日でわたくしと夫だけで二万円、まーくんで一万円の一月訳百万近くはかかっているかしら」

「へー、すごいですねー」

「そ、そんなっ!普通っ!普通ですわよっ!」


そして当然の様に私は小太りマダムの金銭感覚でブン殴られ見事にカウンターを喰らう。


これで悪意が無いのも同時に伝わってくるのが恐ろしい所だ。


なんなら私に凄いと言われ言葉通りに受け止め『何が凄いのか分からないのだがとりあえず凄いと言われて嬉しい』といった表情で照れていたりする。


まぁ、それが当たり前の世界で今まで暮らして来たのだろうから当たり前と言えば当たり前の事なのだろうがこうも住む世界が違うと腹も立たないというものである。


だからこそ小太りマダムにとってスーパーの惣菜調理で働くとうのは新鮮でもあり興味も湧いたのであろうが、なんだか納得がいかない。


「一体何を食べたらそんなにお金がかかるのよ」


しかしながら下世話な話が嫌いという訳でも無く、寧ろ好きな部類である為テレビとかでもついつい観てしまう程には、小太りマダムが庶民の生活に興味を持っているように私は私でお金持ちの食事内容が気になるのは仕方がないというものだ。


これぞある意味でWIN-WINの関係であると言えよう。


「そうですわね………そう言えば何にどれだけお金がかかっているのか考えた事も無かったですわね。今度ばぁやにでも聞いてみますわ」


流石金持ち、イラッとするわね。


人生一度で良いから言ってみたいものである。


「因みに昨日の晩ご飯は何を?」

「昨日は鶏の唐揚げ三種類(日本三大地鶏である名古屋コーチン・比内鶏・薩摩地鶏)食べ比べに魚(ノドグロ)の塩焼き、白ご飯(魚沼産湧き水で炊いた魚沼産コシヒカリ)、ポテトサラダ(トリュフ香る)でしたわね」


何故だろうか?聞こえてくる言葉は庶民でもよく聞くものばかりであるのだが庶民ではなかなか手が出せない金額を弾き出している様な気がするのは。

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