第24話馬鹿も馬鹿で大馬鹿者だ
『浮気ぐらいで』と終わる話であるのならば婚約破棄をして方々に頭を下げ、婚約者の親は慰謝料を立て替えて少なくないお金を俺に支払ったりしなかった筈だ。
「ああ、そうか。そういう事か」
「は?女の子をこんなに泣かせて、いったいどれだけ傷つけてると思ってるの?良く人を、それも男性なら護るべき愛する婚約者を放ったらかしにして何でそんな態度取れんの?」
コイツと北川を重ねて見ようとしていたのだが何処かが違うと違和感を感じていたのだがそれが何かが分かった。
「お前、この後に及んでぬるま湯に浸かって気持ちいいか?」
俺の友人が愚痴っていた様に同じ価値観の者でつるむというのはこういう事だったのだ。
不倫や浮気をしたと聞いてそれを良しとしない者はピシャリと縁を切るか少しづつ距離を置き離れようとする。
そして残ったのはそれを良しと、浮気『なんか』と思っている者だけとなる。
北川はアラサーまで生きていれば知らない間にその様なふるいにかけられ出来上がったグループに属していたのだろう。
だから助けてくれる友人がいなかった。
それと同じ様に俺の元婚約者はまだ二十歳と少しである為今まさにそういうふるい分けが起きている最中なのだろう。
「ぬるま湯だなんて……」
「どうせお前が婚約破棄してから残った人が本当の友人とか思っているんだろ?」
「だって、私が辛い時私を見捨てずに側にいてくれた友達達だもんっ!でも本当はフータにいて欲しかったんだよっ!?だからっ───」
あぁ、俺は馬鹿だ。
馬鹿も馬鹿で大馬鹿者だ。
こんな奴を少しでも許そうと思っていただなんて。
「結局自分の事しか考えれないんだな。ましてやあんな事を起こして周りに迷惑をかけて未だにそんなふざけた価値観の友人を側に置き自分を肯定して悲劇のヒロイン気取りかよ。お前は被害者じゃなくて加害者だろうがっ!!何被害者ぶってんだよっ!!」
女性の前で怒鳴ったのは………いや、人前で怒鳴ったのはコレが初めてだった。
そして俺は煩く喚き出した猿達と結局最後まで謝る事をせずに俯くばかりの元婚約者を無視して友人とカラオケへ行きストレスを発散するのであった。
◆
「ただいまぁぁあああっ!!」
「ちょっとっ!?酒臭いっ!!喉もガラガラで濁声になってんじゃないっ」
「いきくちゃいっ!いきくちゃいっ!」
あぁ、そっか。
俺の婚約者と北川の違いは他にもあったわ。
北川には娘がいる。
娘が居たからこそ、女ではなくて母親である事を選んだからこそ北川は全てを捨てる覚悟が出来たのかもしれない。
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