第21話まるで違った光景として映っていた





「……………ひ、久しぶり」


三日後の日曜日、私は真奈美を連れて少し大きな公園に来ていた。


この公園は真奈美の為に夫婦で良く来ていた、今や思い出の公園である。


そして今、その公園には私と真奈美の他に元夫が来ていた。


「そうだな。とりあえず真奈美が元気そうで良かったわ」


そういう元夫の言葉の端々に明確な拒絶が伝わって来る。


恐らく、顔も見たくないし言葉も交わしたくないのであろう。


しかしながらそれ以上に真奈美に会いたいから渋々わたくしとも顔を合わせるのだと、そういう思いがダイレクトに伝わって来る。


「…………変わったな、お前」

「何が?」

「化粧も派手さが無くなり、髪の毛も艶が無くなっているし髪型などどうでも良いとばかりにポニーテール、服装も質素なものに変わり、爪も傷だらけで眉毛の処理すらしていない」


そして私は元夫に言われて初めてその事に気付いた。


むしろ最近は自分の事まで考える余裕が無かった。


子供を育てるという大変さを今改めて思い知らされている最中である。


逆にそれは言い換えると以前の私はそれだけ真奈美や家族の事を蔑ろにしていたのかもしれないと思わされている様な、そんな気がした。


勿論子育てしながら美をキープしている母親もいる事は知っている。


でも私は、そんなに器用じゃないから。


だから不倫している時は家族に意識が向かなかったのだ。


「今は……女であるよりも母親でいたいから」

「ふん、言うだけは簡単だが何事にも継続するという事は継続すればする程しんどくなるものだ。その思いが今だけではない事を祈るわ」


どうせまた男を作って母親から女でありたいとあの日の様になるのだろう?と言われている事に、まるで信用されていない元夫の冷めた声音から私は気付く。


「マナーっ!パパも一緒にお城作るぞーっ!」

「だめっ!ぱぱ、へたくそだもんっ!」

「そういう事言わないでよマナーッ!パパは悲しいなぁー」

「じゃあぱぱは、あっちでおやさいとってきてっ!」

「お野菜かー。任せなさいっ!」


そして元夫はお姫様に混ざり遊び始めると、お姫様に言われた通りお野菜雑草お肉を取って来るとマナと一緒に料理ごっこをし始める。


元夫と遊ぶマナは、やっと本来の笑顔を取り戻したような、ここ最近で一番楽しそうな笑顔を顔いっぱいに浮かべて今が一番幸せだというのが伝わって来る。


以前までは元夫に美味しい所だけ持って行かれている様に思えたその光景は、今私の目にはまるで違った光景として映っていた。

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