Pretty, Merry, Sweet.

@pretty-merry-sweet

Pretty, Merry, Sweet.

今日は彼女の部屋で、ただ、一緒に過ごす日だ。

どこにも行かず、温かくして、俺はただ彼女の邪魔だけはしないように、けれど穏やかな気持ちで過ごす。

本当に彼女が嫌がるなら、会わない。

けれど、部屋に入れてくれるのだから、少しでも会いたいという俺のわがままは許されてるのだと思いたい。


月に一度の、彼女のブルーな1週間…いや、前段階から数えれば2週間。

ただただ己の中の嵐と、じっと戦う彼女の助けになれないものかと考えるが、温かくしたり、いたわる言葉をかけたり、放っておいてほしいと言われればその通りにということしか出来ない。

けれど、彼女は、それに救われることも多いと言う。


今は、彼女が風呂に入っているので、テレビをぼうっと見ている。何か見たいわけではないが、手持無沙汰で、ただ画面を見ている。

CMが入り「生理からくる頭痛にも。早めに治そう、☆☆で」と言い始めた。

ああ、彼女は、こういうのを飲まないんだよな。一度飲むと頼りきりになりそうだと言って。

俺としては、少しでも楽になるなら、たまに位は飲んでもいいのではと思うのだけど。


風呂場から、ドライヤーの音が聞こえてくる。

その音をBGMに、特に興味のない番組の内容は、余計に何も頭に入らない。

ある程度番組が進行したところで、ドライヤーの音が止んで、彼女がこちらに歩いてきた。

裏起毛のパジャマを上下に着込んで、冷え対策の靴下。隙がない、完璧な冷え対策。


彼女は「何を見ているの?」と、俺の隣に座った。

俺は「分からない。何となく、点けてるだけだから」としか答えられない。

俺たちの会話を読んだのか、は分からないが、番組はすぐにCMに入ってしまった。

また、別の生理用品のcmで「辛いイライラには…」と説明を始めてる。


急に、肩にかかる力を感じたら、彼女が俺の肩に頭を預けていた。

風呂上がりのせいかもしれない。顔は少し赤くなっていた。

その後、体勢を変えてきて、俺の顔を見ないように抱きついてきた。

そして、消え入りそうな声で「今回、イライラも少ないし、頭痛がすごく軽いんだ」と囁いてきた。

「お、良かったね」と返すと「君のおかげかも」と言われた。


はて。俺は、彼女をいつも以上に労っていただろうか。

俺が分からずに黙っていると、彼女が一層強く頭を押し付けて、説明をしてくれた。

先月は、彼女なりに色々試していたのだと。

コーヒーを我慢する日を設けたり、ストレッチを出来るだけしてみたり「あとは、えっちの回数が多かった」と言われて、その恥ずかしそうな声と、風呂上がりの清廉な匂い、あと恥ずかしがって熱を持つ耳たぶに、彼女が生理中にも関わらず興奮してしまったので、深呼吸をして、心を落ち着かせる。


彼女は、俺の中の欲望と理性のせめぎ合いに気づかなかったらしく、話を続けた。毎月辛すぎるので、眉唾ものの対策も試してみようという気になり、その中にセックスの回数が多い人は症状が軽くなる傾向があるという記事を見つけたらしい。


たしかにセックスしないでデートを終えることも半分ほどあるのが今までだったが、思い返すと、先月は会ったら殆ど彼女から誘われてセックスをしていた。

なるほど…にわかには信じがたいし、彼女の実践したどの対策が当たってるのかは分からないけれど、俺にとっては嬉しい話ではあった。

彼女が、少し声のトーンを戻し、少しヤケになったように「だからね、君の体を利用しようとか、そんなんじゃないけれど、協力してくれると嬉しいの」と言うものだから、彼女が余計に愛しく、美しく思える気持ちが更に湧き上がってきた。

「うん、喜んで協力する」と答えたら、彼女が腕に力を込めて、耳元で甘い声で呟いた。

「終わったら、また、えっちしようね」

耳元なんて弱いところで、ストレートのお誘い文句を食らったものだから、俺はしばらく深呼吸を繰り返したのだった。

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