not イージードライバー

≪さて、ミキヤ≫

 紫外線を遮断する運転席に座った自分に彼女が声をかける。

≪頑張って覚えましょうね。運転≫

 楽しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。

「……アイさんがこれ全然でかいじゃん乗用車でもトラックでもないレベルだよ化け物じゃんモンスターなのか?」

 戦車を伸ばしてストレッチ高くして、とにかくデカくした超巨大な車と呼べるかもわからないものを運転する?俺が?

≪俺は映画とかテレビとか本の中でしか青空の下でドライブっていうのを知らないからさ、というのはミキヤの言葉です。安心してください、危なくなったら運転に介入します≫

「……努力します」

≪私もドライブは初体験です≫

「ああ」

≪一緒に楽しみましょう。まずは東、武蔵五日市駅方向へ。複線の線路上なら確実に車幅分を確保できます≫

 初心者にそんな所での運転はハードル高くないかな。そう思ったが運転を教わった時に意外とスパルタだったことを思い出し、大きく深呼吸。勇ましく慎重にアクセルを踏んだ。

 青空の下、慎重さとは裏腹に勢いよく車が走り始める。

≪基本モーター駆動ですので、アクセルはもっと静かにお願いします≫

 初めてのドライブ、同乗者の声は辛辣だったけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る