アナコンドルVSフライング・ブルシャーク サメ狩人は挫けない
武州人也
第1話 空飛ぶ巨大ザメ登場!
照りつける太陽の下の海水浴場は、水着姿の男女で盛況であった。真夏の太陽何するものぞと言わんばかりに、海水浴客は遊興にうつつを抜かしている。
「ねぇ、あれ見て」
砂浜に立つブロンド髪の若いビキニ女が、海の向こうを指差した。海ではなく、その上空を指差したのである。
「ん? 何か?」
「何か……こっちに飛んできてない?」
隣の彼氏は、怪訝な顔をしつつ指差す方に視線を移した。するとどうだろう。向こう側から、何か飛行機のようなものが二つ、近づいてくる。不思議なのは、それが不自然なほどに低空飛行していたことだ。
やがてそれが近づいてくると、その姿がはっきりと見えた。
飛来したそれの正体は、巨大なサメであった。
「サメだ!」
「何でサメが空を!?」
「え、何あれすごくね!?」
海水浴場は、たちまち騒然となった。なぜ、サメが空を飛んでいるのか分からない。人々は逃げるよりも、寧ろその珍奇な光景を眺める方を選んだ。少なくない者が、スマホのカメラを起動してその様子を動画に収めている。
サメは、どんどん近づいてくる。そしてとうとう浅瀬の上までやってきた時、サメの内の一匹は斜めに降下して、筋肉質な男の上半身にかじりついた。
空気は、瞬時に変わった。
「うわぁぁぁぁ!!!」
「ジョーズだ! 逃げろ!」
海水浴場は、一瞬の内に狂騒が支配してしまった。人々は今更のようにサメに恐怖し、散り散りになって逃げ惑った。
「誰か! 助けて!」
もう一匹のサメが狙いを定めたのは、黄色い叫びを上げながら、ブロンド髪を振り乱して走るビキニ姿の若い女であった。奇しくもその女は、先ほど犠牲となった男の恋人であった。サメはあっという間に逃げる女に追いつき、斜め上からその上半身に噛みついた。
白い砂浜に、赤い血がまき散らされる。でろりとはみ出た臓物を口の端からこぼれさせながら、ふわふわと宙に浮くサメは女の肉体を咀嚼している。
そして、完全に女を呑み込んだサメは空中で体をうねらせ、とんぼ返りのように海へと飛び去って、そのまま水平線の彼方へと消えていった。
***
フロリダの海水浴場での飛行鮫襲撃事件は、ただの始まりに過ぎなかった。
フロリダ西部のメキシコ湾に面した地域では、その後もたびたび空飛ぶサメによって襲撃され犠牲者を出した。
普通、
彼らがなぜ飛行能力を得たのかは分からない。分かっているのは、普段は海中に住んでおり、海から来て獲物を食らい、食事が済むとまた海へ帰っていくこと、もう一つは、身体的な特徴から、空飛ぶサメの種類はオオメジロザメであるということだ。人々は彼らを「
あまりにも被害が酷くなりすぎたので、沿岸警備隊が本腰を入れて動き出した。とはいえいくら警戒を強化したところで、神出鬼没の飛行ザメをそう易々と見つけられるはずもない。
そこで沿岸警備隊は、とある人物に白羽の矢を立てた。
「空飛ぶサメと戦わせてくれるって聞いたから来てやったゼ。報酬はスイス銀行に……何てなガハハ」
沿岸警備隊基地に、一人の黒人青年がやってきた。筋肉に覆われた鋼のような肉体を薄い白地のTシャツで覆っている巨躯の青年は、彼を出迎えた紺色の制服姿の警備隊員たちに白い歯を見せて笑いかけた。
「キミがサメ被害専門家のMr.ファーマーか。私は沿岸警備隊第八管区司令官のクアリアナという者だよろしく頼む」
「そうだ。オレがマーク・ファーマーだ。よろしくだゼ」
クアリアナ司令官は、巨躯の黒人青年マークに手を差し出し、固く握手を交わした。二人とも手の皮は分厚く、セコイアの樹皮を貼ってあるかのようだ。
「実は私も対サメ戦闘競技をやっていたことがあってな、対サメ戦闘競技大会でのキミの活躍はよく知っているよ」
「ああ、そりゃありがたいナ」
マークはハイスクール時代に対サメ戦闘競技大会で二度全米覇者となったことがある。彼のライバルであるメイスン・タグチとの激戦は、今でも多くのアメリカ国民の語り草となっている。マークとメイスンの勝敗が最終的に二勝二敗で終わり、真の意味では雌雄を決することがなかったのも、二人の伝説をより伝説たらしめた。
「相手は空を飛ぶサメだぞ。行けるか」
「ああ、フカヒレ野郎どもは色々と戦ってきたからナ。
マークは余裕
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