魔王様はお眠 (メーヤ視点)

私はメイド見習いから魔王様付きのメイド (という名のレーヤ様の補佐)になったメーヤです。

今日も私と同じ頃に同僚になったセーラと一緒に魔王様とレーヤ様を見守っています。


この頃、不機嫌だった魔王様は今日はとても眠そうです。

赤ん坊ですので前からよく眠るのですが今日は特に眠そうです。

ただ、眠そうと言った通り魔王様は眠ってはいません。

眠そうなのに眠るのを嫌がっているみたいです。

(どうされたのでしょうか?いつもならレーヤ様が側に居れば直ぐにお眠りになられるのに)


「魔王様?お眠ですか?ねんねしますか?」

「んぅ~っ」

「ねんねは嫌ですか?」

「う~、、、あい」

「んー、、、ねんねはしたいですか?」

「ん」

「眠りたいけど眠るのが嫌か、、、怖い夢でも見ましたか?」

「う~」


レーヤ様がそう聞くと魔王様は首を横に振りました。

(怖い夢を見たわけではないのですね?なら、何故?)


「なら、眠るといや~な気持ちになるからですか?」

「うっ!あい!」


レーヤ様の次の質問に魔王様は力強く頷きました。

(嫌な気持ちですか?どういうものなのでしょう?)


「んー、、、なら、魔王様が眠っている時はオレが魔王様とずっと手を繋ぎますね。これならイヤな気持ちも少しは無くなりますよ?」

「う~、レーヤぁ」

「はい、ねんねしましょうね?魔王様が起きるまでずっとオレが側に居ますから、、、ね?」

「ぅ、、、すぴー」

「大丈夫です。オレが側に居ますから不安なんか消えてしまいますよ」

「ん~、、レー、、ヤぁ、、、」

「クス、、、はい、魔王様。レーヤは側に居ますよ」


驚いた事にレーヤ様はあれほど眠るのを嫌がりグズっていた魔王様を一瞬で眠らせてしまいました。

(さすがです!レーヤ様)


「あの、レーヤ様、、少しばかり大丈夫ですか?」

「ん?何ですか?メーヤさん」

「あの、そのですね?何故、魔王様が眠るのを嫌がる理由が解ったのですか?それと、何故あんなに眠るのを嫌がっていた魔王様をあんなに簡単に眠らせる事が出来たのですか?」

「ん~」


レーヤ様は少し考えた後、説明してくれました。


「少し説明するには感覚的なものなので難しいんですが、魔王様が眠るのを嫌がった原因は怖い夢ではなかったですよね?」

「はい、魔王様は否定されておりました」

「なら、突然不安になったんだろうなって」

「突然、不安?」

「ええっと、これは赤ちゃんだけではないんですけど、魔王様は誰も側に居ないのが当たり前だったのがオレが来てから反対に常に誰かが側に居てくれるのが当たり前の環境になったのは知ってますか?」

「はい、知っております」


魔王様のお世話係りのレーヤ様が喚ばれたのは城中の全員に知らせが来たので知らない者は居ません。

レーヤ様のお名前は存じておりませんでしたが、魔王様のお世話係りが誰にも懐かなかった魔王様に気に入られ、ずっと魔王様の側から離す事がないという噂が城中でされておりましたので、レーヤ様が来てから魔王様の側には人が (というかレーヤ様)が常に側に居たのは知っておりました。


「そういう子は一人で居た時の時間を知っています」

「一人の時間?」

「簡単に言えば、眠ったら安心出来るまたは好きな人が側に居るのは本当は全部夢で起きたら誰も居ないんじゃないか?というのを感覚で感じて不安になって眠くても眠りたくないってなるんですよ」

「え、、、それは」

「これとは反対に常に側に安心出来る人が居たのに何らかが原因で側に誰も居なくなった人も眠るのを不安がって嫌がります。この場合は眠ると側に居た人の夢を見て起きたら居ないという絶望と寂しさを味わうからです」

「それは、その、そちらの方がとても寂しく悲しいですね」


私がそう言うとレーヤ様は頷いて魔王様を慈愛のこもった目で見つめてから話します。


「魔王様の場合は前者ですから側に居る人がその不安を取り除いてあげるのが一番です」

「どのようにですか?」

「さっきみたいに眠っていても側に居て夢ではないと分からせる為に眠っている間ずっと手を繋いであげるとかですね。これで眠っていても側に居るのが感じ取れるので不安はなくなって眠ってくれますね」

「そうなのですか、、、なら、魔王様にはレーヤ様以外は出来ませんね」

「え?」

「魔王様が何よりも誰よりも懐き大好きで安心するのはレーヤ様以外居ませんもの」

「そうですかね?それなら嬉しいですね。魔王様の一番みたいで」

「え?その、、、いえ、何でもありません。魔王様のミルクを作って来ますね」

「?はい、お願いします」


私はレーヤ様は会った瞬間から魔王様の一番である事は告げずに魔王様のミルクを作りに行きました。

(レーヤ様は気づかれていませんが、魔王様はレーヤ様以外を好いていません。私やセーラやサージ様にも少しは心を開いておりますが、それは懐くというよりは、、、けれどそれはレーヤ様が知らなくて良い事です。レーヤ様は癒しの者でもあるのですから、健やかで穢れなきように過ごしていただかないと)


勇者到着まであと、、、3日





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