魔王様の初めての一歩

初めての散歩でメイド見習いのメーヤさんに会ってから一週間たった。


オレは床 (ふわふわで赤ちゃんに優しい素材)に座っている魔王様と少し離れた所に座っている。

魔王様はニコニコしながらオレに手を伸ばしている。

(ぁあ!魔王様可愛い!スッゴク可愛い!めっちゃ抱っこしてイイコイイコしたい!けど!けど!今は我慢しねぇと!くっ、可愛い!)


「あ~、う~」

「魔王様、こっちに来られますか?」

「あ~うみゅ?レーヤぁ?」

「はい、レーヤですよ。魔王様、こうやってハイハイ出来ますか?」

「あう?う~、うっ!」


オレは手本を見せるようにハイハイしてみた。

魔王様は少し首を傾げたが直ぐにオレの言ったことを理解したのかハイハイの格好をとろうとした。


「あうっ、うっ!むっ!」

「はい、そうです!両手をついて」

「むぅ、うっ!」

「そうです!両手にも体重を少し乗せて」

「むっ!ぷきゅうっ、、、ふぇ」

「ああ!痛いですか?よしよし、頑張りましたね」


魔王様はハイハイをしようと片手を前に出そうとした時バランスを崩して顔から倒れた。

オレは慌てて魔王様に駆け寄り床にぶつけた (といってもふわふわなので痛くないだろうが)顔を優しく撫でながらあやした。

(う~ん、今日はもう辞めた方がいいか?)


「魔王様、今日はハイハイ終わりにしますか?」

「う?ちゃ!むっ!むっ!」

「お!頑張りますか?」

「あい!」

「良いお返事ですね?では、もう少し頑張りましょうか」

「あう、あい!」


オレはまた魔王様を床に座らせた後、少し離れた場所で待機した。

(負けず嫌いなのか?まぁ、頑張って挑戦するのは良いことだよな!)


「あう!うだ!むっ!だっ!」

「そうです!もう少しですよ、魔王様!」


そんなこんなで次が五回目のチャレンジになった。

他の結果?

聞かないでくれ、、、最初とほとんど同じってだけ言っとくぜ、、はは。


「よし、魔王様、今日はこれが最後ですよ」

「うっ、うっ」

「よし、魔王様、こっちです!」

「むっ!」

「そう!そうです!ゆっくりで大丈夫ですよ!」

「あう!むっ!うっ、、、」

「そう、そうです!あとは手を前に出すだけですよ!」

「あうっ、う~っ、、、だ!」

「っっ!やった!やりました!魔王様、凄いです!」


魔王様が手を上て倒れずに上げた手を前に出して床に降ろした。

魔王様のハイハイの最初の一歩である。

(ああ!サージさん!サージさんにも!)


「魔王様、ちょっと待ってて下さいね!直ぐに終わりますので!」

「あう?う?」


オレは魔王様に断りを入れて全力で走り扉を開けて大声でサージさんを呼んだ。


「サージさん!サージさん!」

「なんだ。何か合ったのか?」

「ええ!魔王様が!魔王様が!」

「魔王様がどうかしたのか?」

「ハイハイの最初の一歩に成功しました!サージさんも見て下さい!」

「なに!魔王様がハイハイを?」

「はい!」


オレはサージさんを部屋に入れてさっき自分が座っていた所にまた座り魔王様に声をかけた。


「魔王様、さっきのをサージさんにも見せてあげて下さい」

「あう?う?むっ、、、あい!」

「魔王様、有り難き幸せです」

「よし、では、魔王様、こっちに」

「うっ、むっ、むぅ、、、だ!」

「ほら!ほら!サージさん!魔王様が!」

「ああ、魔王様がハイハイを」

「うっうっ」

「ああ、もう、足も動かしてハイハイ出来るようになったんですね?凄いです!魔王様!」

「あうっ!うっ、レーヤぁ」

「はい、こっちまで来れますか?」

「うっ、むっ、あい」


魔王様は多少ふらふらしていたが、ゆっくりとオレとサージさんが座っている場所 (魔王様から一メートルくらい離れた場所)までハイハイして来た。

(うわっ、魔王様、本当に優秀!天才!こんなに早くハイハイをマスターするなんて)


「魔王様!凄いです!天才ですね!良い子ですね!カッコいいですよ!」

「あう!あい!」

「サージさん!サージさん!魔王様は凄いですよね?」

「ああ、とても凄い」

「ほら、魔王様、サージさんも魔王様が凄いって」

「あう?うー?はーり?」

「はい、サージさんです!」

「はーり?」

「はい、魔王様、サージです。名前を呼んでもらえ光栄です」


オレが抱っこしてイイコイイコと頭を撫でている魔王様にサージさんはとても恭しく接していた。

(うわっ、サージさん、とってもカッコいい!さすが本物は違うよな。なんてぇの凛としていて綺麗っていうのか?スッゲーカッコいい!)


そんなこんなで魔王様がハイハイを覚えたが、魔王様がハイハイを覚えた事で魔王様の行動範囲が広がり、オレが居ないと探し回る事になるのをこの時のオレもサージさんも知るよしがなかった。




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