一章 「消える空き缶の謎」
また、なくなっている。
私、木村 美音《きむら みお》はとある公園で、頭を抱えていた。
今の時間は16時で、夏の日差しはまだまだ強い。
今年の夏も、『例年より暑くなる』とニュースで騒ぎ立てられていた。
もうその言葉はうんざりだ。
いつも同じ言葉で、なんの謎もなければトリックもないからだ。
発見や新しさがそこにはない。
私は常にそれを求めている。
肩まであるストレートの黒髪をアップしてくればよかったと少し後悔する。
私は水色のキャミソールワンピース姿で、手にはハンディファンを持ち、暑さに耐えていた。
私は今大学生だ。いつも講義が終わると帰り道にあるこの公園で少し休憩をしてから、帰っている。
ひまわりが高く花を咲かせている。季節ごとに四季を感じられ、この公園はとても自然が豊かなところだ。
公園といっても、大きな公園ではなくて、団地の端っこにあるような小さな公園だ。
遊具も、ブランコとすべり台があるだけ。
近くに保育園などもないからママさんたちが集まることもない。
いつもそこは、人は少なく静かなところだ。
今日だって、公園には人が数人いるぐらいだ。
私が頭を抱えているのは、公園のブランコの近くに捨てられていたある空き缶がなくなっているからだ。
もちろん、私が捨てたものではない。
誰が捨てたかもわからないただのゴミだ。
ゴミだけど、気になることがあるのだ。
昨日まではあった。
昨日の同じ時間に、ここで休んでいたとき、確かにあった。
それは存在感を示すように、ブランコの横にきれいに置かれていた。
それが、今日は来るとなくなっていた。
しかも、そんな日が、ここ数日ずっと起きている。
最初は空き缶のことなんてあまり気にならなかった。
ゴミが落ちている程度に思っていた。
でも、次の日になると、私は空き缶に興味を持ち始めた。
私が見かけた次の日の同じ時間には、きれいにその空き缶はなくなっている。
そして、それとは別の空き缶が新たに置かれていたのだ。
何かおかしくないだろうか。
これが一度や二度ならよくあることかもしれない。
でも、ここ数日間、毎日なのだ。
そんな偶然あるだろうか。
捨てていく人は同じ人かはわからないけど、拾っていく人は同じ人だとこの時点でわかった。
だって、空き缶を拾っている人は、どんな種類の空き缶でも拾っているのだから。
つまりは、その人にとって空き缶を拾うこと自体になんらかの意味があるということだ。
そうであるなら、誰が、いつ、何の目的でその空き缶を拾っているだろうか。
ただの善意でないのかもしれない。
謎の匂いがしてきた。
何か新しい発見がありそうな気がしてきた。
一体どうして、空き缶を拾うのだろう。
私はそのことについて、明日から早速調査してみることにした。
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