異世界世紀末

シマシマ

第1話 異世界バイク

「そのモノ漆黒の鎧を纏い、クロガネの馬に跨るものなり」

そのモノは勇者――世界の危機に推参し、平和を導くものなり。

おばあさまの口癖がそれだった。気分が乗ってくるとすぐその伝説を語り始める。

大抵、勇者が仲間とともに悪の魔王の城に突貫するところで疲れて寝てしまうのだが。


「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!」


私は酸欠の頭でそんなことを思い出す。

胸のペンダントを握りしめて私は走る――私は追われている、真夜中の、この森の、魔物に。

足がもつれる。もうガクガクで、このまま足を止めたらもう二度と動きそうにないくらい。


「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB11111!!!!!!!」


真っ暗な森の中、明かりが見えた!

この際誰でもいい、山賊でも奴隷商でも。自分は助かるはずだ。

全力疾走でガサリとヤブから私は飛び出した。

だが――


「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!!!」


ここは奴らの巣だった。

魔物が火を囲み、肉を貪り食っていた。

人間を――私の村のひとたちを――!

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