炸裂する感情

春嵐

第1話

 生きようとして、生きてきたわけではなかった。死にそうになると、その方向、死に向かって突っ込んでいく。気付くと、生きている。そんな日々が続いて、今がある。

 仕事に不満はなかった。金はどうでもいいが、常に自分に死の危険を与えてくれる。

 普通に死にたいのではなく、誰かの、何かの役に立って死にたいのだと、最近気付いた。なるべく、誰にも知られず。ひっそりと。何かのために死ぬ。そんな死にかたがいい。


「これを持っていけ」


 渡された拳銃を、固辞した。


「護身用の物は必要ありません」


 自分の身は、守れなくてもいい。


「持っているからといって警察にいぶかしがられるわけでもないぞ。今回の件は管区も把握している」


「いえ。使わないので、必要ないというだけです」


 どうしても必要なら、奪うだけだった。


「そうか」


 仕事の依頼を受けるのは、基本的に彼女で。自分は、その依頼を受けて動くだけ。彼女の選別した依頼なら、まず間違いはなかった。

 今回は、死ねるだろうか。


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