第九話

「もう一度聞く、目を逸らさず言ってくれ」


「くどいな、重いからどいて、眠りたい」


「言うまでどかない」


「飽きた、重荷でしかない、もう諦めて」


「そんな哀しい顔で言われて納得出来るか」


「……3年もきみの時間を奪ってしまった。

 元々長く続ける気はなかったし、もう終わりたいんだよ」


「俺の気持ちを置き去りで、か」


「別れなんてそんなものでしょう」


「……何でかな、3年一緒に居るのに心許してくれないの。本当の理由あるだろ、職場の同僚には話すのに俺には黙りか」


「何を言ってる……」


「幾ら休み前だからって教室で酒盛しながら管巻いたらダメだろう。

 俺から言えばいい?『俺を━━━』」


「言ってどうなる、知らなくていいんだよ、 大人しく戻って結婚でも子育てでもしろ!」


「取り乱すあなたは初めてだ。

 試しに言えよ。あなたには悪いが俺はいつでも女子を抱けるし好きな時に戻れる。

 男同士で万が一もないし、無理矢理関係を続けて辛い思いをさせる程鈍感じゃないから最後に社会勉強で別れればいいじゃん」


「無駄な勉強すんな!

 絶対馬鹿だ、言う訳がない、早くどけ!」


何故か重力に勝てず抗っても力が入らない。

そこへ屈託のない笑顔が優しく先を促す。


やめてくれ。

閉じ込めたどす黒い想いが溢れてしまう。

「…………もう限界なんだよ…………抑えなきゃいけない、でもめちゃめちゃに壊してしまいたい、だから今すぐ逃げ出したいのに、どうしようもなくて……

 気が狂いそうな程、きみを……」


「あなただから構わないよ、だから」


━━━俺を抱いてください

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