第7話 名前は
鬼の名前は
目の前の鬼は名を言うのも嬉しそうだ。
「
「
「人間の
人間が鬼に名前をつけるなど初めて聞いた。
「に、人間の
「そうだぁ」
「
「怖いものしらずの人間がいたもんだな!」
「
「
「
天狗の里では、親に捨てられた赤子達が天狗に育てられている。だから人間は赤子を捨てる事があるのだと知ってはいたが、
「それで捨てられた
「いんや、逆だぁ。俺が助けられたんだぁ」
この図体のでかい鬼を助けたとは、なんと強靭な
「世の中には途方もない人間がいるもんだな!」
「そうだぁ。
「会ってみたいと思うじゃないか、その
「どうした??」
具合でも悪くなったのかと心配した。
「
「そうか、それは悲しいな…」
人間は簡単に死んでしまう。
病気もそうだし、餓えもそうだ。自然にやられてしまう事もあるし、動物にやられる事もある。
そんな人間達を助けるのが天狗であるのだと信じている。
「俺は
鬼が泣くなど聞いた事がないので、それはそれは仰天した。
「
「いやぁ、元気だったぁ。でもしばらくするとあんまり起きんくなって、ずっと寝てるようになったんだ。体でも痛いんかと思って寝ておくように言ってたんだ。そしたらある時に、珍しく喋ったんだ。俺も嬉しくて調子こいて喋ってたら、
そう説明すると、嗚咽で言葉にならないくらいに泣き出してしまった。
先程、鼻水をかませてもらった恩もある。子供天狗は布きれを持っていなかったので、背中に背負っている葉っぱを外して
「これで鼻でもかんでくれ」
子供天狗の背中を覆える程の大きい葉っぱだったが、
「ありがとう。だけどこれはもう使えないなぁ。」
「良いんだ。木に紛れると思ってつけてるだけだからな」
「人間の子は木に紛れたいのか」
「うん、まぁ、そんなところだ」
少し答えにくかったので誤魔化した。
「しかしその話だと、
「そうだなぁ、苦しんで死んだんじゃないだろうから、それだけが救いだぁ」
そうして鬼の堅い頬にある涙の後を拭った。
「所で
「何で岩を動かしたいんだぁ?」
不思議なもので、もう怖くは無かった。
「田畑に土砂岩が流れこんでしまって困っている童がいるんだ」
困っていると言われた訳ではないのだが、きっと困っているに違いない。
「俺はこの腕で岩をどけるだけだからなぁ、方法って言っても…。その岩、俺が行ってどかしてやろうかぁ?」
そんな事は思いもつかなかったのでびっくりした。
「そんな、いいのか?鬼丸はここで忙しいんだろう?」
「忙しいが他の事が手につかない訳じゃない、ほれ、行こう」
「待ってくれ、今行ったら陽が登ってくる。明日にしよう。」
「そうか、わかった。では明日、迎えに来てくれるか?」
「あいわかった!助かる、ありがとう」
「いいんだぁ。俺は人の為になる事をして、人間になりたいんだぁ」
鬼が人間になる、とはまた凄い事を言い出した。
「人間なるとは、どうするんだ?」
「人の為になる事をすれば、いつか人間になれると聞いた。この岩達も、それを教えてくれた人間に頼まれててしているんだぁ」
「だいぶ転がしたなぁ、ちょっとは人間に近づいたかなぁ」
それはたいそう嬉しそうに言った。
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