第17話 妖精さんとクリスマス(特別編)

うぅ。寒い…。

俺は朝目が覚めると布団に居るのに凄く寒かった。

何事かと起き出し、テレビをつけると…


『おはようございます!本日は珍しく日本は今夜未明から、停滞低気圧の影響で日本全体が寒波に襲われるでしょう…』


「マジかよ…これ以上寒くなるのは勘弁だ…」


『しかしながら、今日はクリスマスです。家族とお鍋するも良し、コタツでのびのびとするも良し。…彼氏彼女とイチャイチャするも良し…そして、もしかしたらホワイトクリスマスになるかも知れません!楽しみですね!』


今、このアナウンサー彼氏彼女の所…凄く感情がこもってる気がしたが、気のせいか?


「しかし、雪が降るかもかぁ…」


まぁ、俺にはほとんど関係無いけどな。

家族は皆、家には居ないし。俺が鍋を作ったら多分…火事になる。

コタツは…確か、あったな。


「よし!夜に備えてこたつを出そう!」


そして、俺は家の奥からこたつを引っ張り出してきてリビングにセットした。


「ふむ、何かが…足りない。こたつと来たら、ミカンか。そして、適当な飲み物っと」


一応一昨日から学生が楽しみにしてる長期休み期間、通称・冬休み になったから沢山時間はあるのだ。


「ふふ、俺一人で最高のクリスマスにしてやるぜ。ボッチの力舐めんなよ!!」


誰に対しての宣戦布告かは分からないが…俺は気合いを入れて買い出しに出た。


『おっすー。愁!今何してんの?』


「お?柊か。これから買い出しだ」


スーパーに向かう途中柊から電話が来た。


『おー、何買うの?』


「ミカンと飲み物だ」


『ふーん。なんか作らないの?鍋とかさ』


「ははっ!柊、君は面白いことを言うな。俺が鍋なんて作ったら家が燃えるぞ?」


『いや、なんで鍋作ったら家が燃えるんだよ!料理下手にも程があるだろ!』


「ちなみに、卵焼きすら俺は作れん。どうだ?凄いだろう?」


『なんで、そんなにドヤってるのかは知らんが…そっか、なるほどな』


「なんだよ?どうした?」


『いや、今年も1人なのかなって思ってよ』


「気を使わせたな。大丈夫だ。もう慣れた」


『だがよぉ。どうせならパーティーでもするか?』


柊、お前は良い奴だな。だが、心配はかけたくないからな。


「いや、気にすんな。俺は俺で楽しくやるから、お前は及川さんを楽しませる事だけ考えとけよ?」


『…はぁ。分かったよ。今年は愁にも来るといいな。サンタさん』


サンタか…そうだな。


「だな。期待しないで待ってるわ」


そうして俺らは適当に話して電話を切った。

そして、俺は目的の物を買い家に速攻帰った。


「…やばい。二つの意味で死ねる…」


1つ目、寒さ

2つ目、リア充の多さ


「なんだ、今日は聖夜だぞ?こんな時間から性夜にしてんじゃねぇよ!頭大丈夫か!日本!?」


俺は日本の最近の教育に一言物申したかった。


「ま、幸せそうで何よりだよ…」


その後は適当にテレビを見たり、漫画を見たりしているうちに、どうやら外は暗くなってきたらしい…


ぐぅぅぅぅ〜…


「あぁ…腹減った。ミカンじゃ足りないか」


一応1箱買ってきたのだが…飽きた。

流石に1人で食べる量じゃ無かった。


「…はぁ。柊は今頃楽しんでんだろうな〜」


まぁ、1人には慣れてるからな。今年も同じだ…


そんな事を考えていると、家のチャイムがなった。


『ピンポーン、ピンポーン』


「誰だよ?こんな時間に…」


そう、時刻は午後6時。外も真っ暗である。


「はいはーい!」


ガチャッ!


「こんばんわ!神原さん!どうも、サンタさんです!」


俺は目を疑った…

だって、今目の前に…妖精サンタさんが居るからだ。


「…サンタ来ちゃった」


「はい!流石に寒いので中に入れてください!風邪引きます…」


「あ、あぁ。どうぞ…」


「お邪魔します〜!」


そうして妖精さんサンタver.が中に入りそして、いつの間にかコタツに突撃していた。


「はぅ〜…暖かいですねぇ〜」


うん。顔がふやけてるな。可愛い。じゃなくて!


「で、花園さん?今日はどうしたんだ?」


「え?あぁ…神原くん!今日は何の日か知ってますか!?」


「お、おう。クリスマスだな」


「そうです!クリスマスなのです!だからサンタが来ました!」


「そ、そうか…ようこそサンタさん。ゆっくりしてってね…?」


「えへへ〜、はい!あ、みかんだ〜」


そうしてサンタさんは俺の家でくつろぎ始めた。


「私、家族意外とこうしてクリスマスを過ごすのは初めてなんですよねぇ〜」


「あぁ、すぐ寝ちゃうもんな」


「そうなんですよ…そのせいで中々外で遊べませんからねぇ…でも!今年は違います!」


「と、言うと?」


「神原さんが居れば私は起きてられるし、色々な事が出来るのです!だから、今年はずっとやりたかったクリスマスパーティをしたいのです!」


と、妖精さんは言い切った。

パーティをするのはいいが…


「何パーティーをするんだ?」


俺がそういうと妖精さんは答えた。


「鍋です!」


「…鍋?」


「はい!最近の若い人は鍋パ?と言うものを友達とやるらしいので、それをやりたいです!」


「なるほどな…今日は冷えるらしいし、ちょうどいいかもな」


「はい!しかも、もう準備は万端なのです!」


え?準備?ただコタツでのんびりしてた様にしか見えなかったが…


『ピンポーン!』


「あ!来ましたね!はいはーい!」


そういい、妖精さんはパタパタと玄関に向かい、何かを受け取ってきた。


「お待たせしました!さぁ、あとは火を通すだけです!」


そういい持ってきたのは鍋に具材が入っている状態のものだった。


「こ、これは?」


「はい!私が自分の家で用意していたものです!そして、自信作です!」


どうやら、既に家で作っていたらしい…


「…凄いな。味はなんだ?」


「今日は…キムチ鍋です!そして、具材はホルモン、ニラ、豆腐、鱈、ネギ、シメジ、つくね、等ですね!スープも私が作りました!凄いでしょう!」


そう語る姿は(褒めて褒めて!)と言っているようでつい…


「あぁ、流石だ。こんなに頑張ってきてくれるとは思ってなかった。ありがとう」


と、言いながら頭を撫でてしまった。

一瞬、やべっ!っと思ったが妖精さんは大層喜んでいた。


「えへへ〜褒められました〜」


多分尻尾があったらめっちゃブンブン!って振っている感じには喜んでいると思う。


「褒められましたし、もっと頑張りますよ〜!」


そうして妖精さんは凄く張り切り、鍋の用意をしていた。


「…ご馳走さまでした〜」


「ふふっ!お粗末さまです!」


やばかった…妖精さんってほんとに料理が美味すぎる…。手作りとは思えない出来で、出汁から作ったらしい。


「花園さんは本当に料理が上手だよなぁ…」


「はい!私の趣味の1つですからね!」


「そっか…てか、少し暑いな…」


「そう…です、ね?」


ん?少し様子がおかしいと思い、妖精さんを見てみると…


「あう…眠い、です。まだ、起きてるんです…」


コクリ、コクリ、と船をこぐように頭が揺れていた。


「大丈夫か?少し寝るか?」


俺はそう聞いたが、妖精さんは首を横にふった。


「いや…です。おきて、るんです…」


「そうか。じゃあ…ほら」


俺はそう言って手を差し伸べた。

その手を妖精さんはすぐに掴んで…


「復活です!目が覚めました!」


「おぉ、急に元気になったな」


「はい!流石神原さんですね。もう手放せませんよ〜…」


そういい、妖精さんは俺の手をにぎにぎしながら微笑んで居た。

しかも、絶対に離れないようしたいのかいつの間にか握り方は…俗に言う、恋人繋ぎの状態になっていた。


「…そう言えば、なんか起きていたい理由でもあったのか?」


俺はにぎにぎされている恥ずかしさを誤魔化すために、話題を変えた。


「そうなんですよ!今日はホワイトクリスマスになるかもって聞いたので、見てみたいのです」


「あぁ、確かにそんな事言ってたな。そしたら…少し外に出てみるか?」


「はい!アイスが食べたいです!」


「OKだ。けど、その前に…」


俺は流石にサンタさんコスの妖精さんを見て、これじゃ寒いだろうと思い俺の上着を貸してあげた。


「…あ、ありがとうございます」


「それと、マフラーに…手袋は…片方の手だけでいいか」


「あぅ…か、神原…さん?」


「よし、これでいいな。どうだ?寒くないか?」


「は、はい…では、行きましょう」


何故か妖精さんは少し顔を赤くしながら先を急ぐように歩き出した。


「あぁ、ほら。手を繋がないと眠くなるだろ?全く…」


そういい俺が妖精さんの手を握ると…


「はぅっ…」


「ん?どうかしたか?」


「い、いえ!な、なんでもありましぇん!」


なんか盛大に噛んでいた。


「そうか?じゃあ、行こうか」


「はい…」


ちなみにだが、今の妖精さんの格好は完全に彼氏の服を借りて照れている彼女にしか見えない。

しかも、今の妖精さんの心情は、異性の、しかも気の置けない相手の匂いがするマフラーや服を借りているため、凄く恥ずかしいのだ。

しかも、トドメには…


「ほら、流石に手を出していたら寒いから、ポケット入れるぞ?」


そういい、愁は自分のポケットに妖精さんと手を繋いだまま手を入れた。


(あぅあぅぅ〜…)


妖精さんは今煙が出るほど照れている。

それに気づかない天然の愁くん。


「あ、雪だ…」


「わぁ…綺麗ですね…」


そんなに2人を見守るように雪は降り始めた。


まだこの2人の関係は始まったばかり。

そして、この2人の感情がこれからどう動くのか、それは神様しか知りえないことだけど…


「来年もパーティしたいな…」


「任せてください!また腕によりをかけて準備しますから」


「リクエストは?」


「ドンとこいです!」



きっと…この関係はまだまだ続くことだろう。



クリスマスver.


妖精さんとクリスマス(特別編)


〜fin〜



…はぁ、羨ましい。

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