第8話 あなたの為だけの物語
ぱたん。
耐え切れなくて、本を閉じた。
アルバート様は、顔が真っ赤になってしまった私を不審に思ったか、立ち上がってすたすたと近づいてきた。
「どうした? 何が書いてある?」
「ええと……その……」
ここで読まなければ、まず間違いなく「仕事ができない」とクビにされる。
かと言って、花も恥じらう十六歳が、十三歳の王子様に読み聞かせるには、内容が。
あまりにも。
「リジ―先生?」
軽く身をかがめて、顔をのぞきこんでくる。
「アルバート様、長くなりますので、どうぞおかけになってください」
椅子をすすめて、私は本を開きながら部屋を歩き始める。床に落ちていたブーツにつまずき、バランスを崩しつつもなんとか威厳に満ちた表情を保とうとする。
ヘレン先生のように。
(私はヘレン先生に推薦を頂いて、王子様の家庭教師としてここに来たんですもの。相応の知識と教養があると見込まれて。ならば、そのすべてを使っていまこの場で語ってきかせてあげましょう)
私から、気難しい御主人様へ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます