第6話

 正は以前から細木に気があったのだ。


 しかし、自分みたいなデブが告白しても、『キモい』と言われるだけと思いあきらめていた。

 何度かダイエットにも挑戦したが、ことごとく失敗していたのである。


『頭山さん、お身体の方は大丈夫ですか? 木に養分を吸い取られすぎて……』

「ええ、今のところ命の危険はないようです。根も頭蓋に侵入する様子はないみたいだし」

『そうですか。もう、会えないのではないと心配していました』

「え?」

『この際だから言ってしまいます。頭山さん、好きです。会社に戻れたら、私と付き合ってください』


(えええ!! なに? 俺コクられてるの!?)


 電話が切れた後も、正は今あったことが信じられない気分だった。


(これは夢だ。俺みたいなデブがモテるはずがない……は! そうか!)


 正はすっかり引っ込んでしまった自分のお腹に目を向けた。

 今までいくら頑張っても成功しなかったダイエット。

 しかし、思わぬことで成功してしまった。


(そうか! だから細木さんは自分のことを見直してくれたんだ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る