第3話

 この医者にとって、この症状は既知の症状だった。

 しかし、対処法などなかったのである。


「な……なんで?」


 正は思わず後ずさった。


「最近サクランボを種ごと食べませんでしたか?」

「え? サクランボ?」


 しばらく考え込んで思い出した。

 数日前、会社で同僚の三島みしまがお土産のサクランボを配っていた。

 もちろん、正もサクランボをもらって家で食べたのである。


「会社の同僚からもらったサクランボを食べたが。種があまり小さいのでつい」


 普通のサクランボと違って、種が異常に小さかったのである。


「やはり。原因はこれです」


 医者はパソコンの画面を示す。

 国際宇宙ステーションISSが映っていた。


「数年前、ISSに桜の種が持ち込まれ八か月保管するという実験がありました」

「それで?」

「地上に持ち帰った種を撒いたところ、いろいろ異変があったのです」

「異変?」

「異常に早く成長したり、本来発芽するはずのない中将姫誓願桜ちゅうじょうひめせいがんざくらが発芽したり、そしてその中の一つがこの様に人に寄生する能力を持ってしまったのです」

「んな、あほなあ!!」

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