宇宙桜

津嶋朋靖

第1話

「な……なんだ! こりゃ?」


 頭山とうやま ただしがそう呟いたのは、洗面所の鏡の前。

 百三十キロの巨体を揺さぶりながら、鼻歌交じりに髭を剃っていた時のことだった。

 髭の剃り残しがないか、点検していると妙な物体が目に入ったのである。


 それは正の頭頂部にあった。


 小さな木が……


 恐る恐る木を掴んで引っ張って見る。


「痛ててて!」


 皮膚ごと引っ張られた。

 木は明らかに正の頭皮に根を張っていた。


「なんなんだよ。いったい?」


 木の高さは今のところ五センチほど。


 正はしばらく考えてから、タンスの中からカーボーイハットを探し出し、それをかぶって医者へ向かった。

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