【実話】妹が学校でセーターを盗まれていた話

栗音

第1話【実話】妹が学校でセーターを盗まれていた話

私には三歳年の離れた妹がいる。

その妹は私立高校にスポーツ推薦で入学し通っていた。

ここでは、仮にその高校名をK高校と置こうと思う。


ある日、私がリビングでテレビを見ていた時、妹が二階にある妹の部屋からドタドタと急いで階段を降りリビングに入ってきた。

そして、「なぁ、お母さん。何処探しても学校のセーターが見つからんねんけど知らん?」とキッチンで洗い物をしていた母親に尋ねた。

「え?

そんなん知らんよ。

ちゃんと探したんか?」

と母親は洗い物を止め妹に聞き返す。

「探したよ。

何処探しても無いねんもん」

妹はセーターがあまりにも見つからないからか少しイライラしている。

「ほんまかいな。

ほら、探しに行くで」

母さんは洗い物で濡れた手を拭き妹を連れて二階の妹の部屋に向かう。


それから二階の部屋から物をどかしたり漁ったりする音が聞こえてきた。

そして、三十分ほどたったところで二階から「ほんまにないやん。あんたどこやったん?」「知らんよ。どっか変なとこに持って行くもんじゃないし、お母さんが洗濯した後にどっかやったんちゃうん?」「そんなことやらんわ。畳んで置いてたやつをあんたがどっかやったんやろ?」などと口論が聞こえてきた。

このような口論は時々あるので、私はまたやってるわ。としか思わず、テレビを見続けていた。


またそれから十分ほどたった後に妹と母親がリビングに口論を続けながら降りてきた。

「取り敢えず、明日学校に行って先生に落し物でセーターが無いか聞いてみなさい」「うん、わかった」と言う会話がされ、その日はここでセーターの話は終わった。

次の日、妹は学校の落し物でセーターは無かったらしく、夜に母親との口論の末、新しいセーターを買うことになった。


その日から数ヶ月の月日が経ったある日。

私の家は、時間が合う人は皆で夕食を取るので時間が合った、私、妹、母親の三人で食卓を囲んでいた。

その時、妹が何故かやたらニヤニヤとしながら「なーお兄ちゃん。この前、私のセーターが無くなったって言ってたやん」と言ってきた。

俺は、「ん?そんな事もあったな。それがどうしたん?見つかったんか?」と数ヶ月前の記憶を呼び起こしながら質問を返す。

すると妹の口から衝撃の言葉が出てきた。

「それがなぁ〜。私のセーター盗まれててん」

「は?マジで言ってる?」

私はそう言いながら妹の横で夕食を食べている母親に目線を向けたが本当の話なようで母親は黙って軽く頭を縦に降った。

妹の通っているK高校は偏差値や進学率、巷の評価からしてもごく普通の高校だ。

そんな高校で窃盗という犯罪行為が行われたなど普通は考えない。

しかし、その時の私は違った。

少し驚いたが直ぐにあの高校なら有り得るかと納得した。

私は、以前にも妹からK高校で大問題が起こったことを聞かされていたからだ。

妹の話では、ある子が移動教室の時に鞄から財布が盗まれていいたらしい。

その話には妹は全く関係なく、「そんな事もあるんだなぁ」ぐらいにしか思わなかったので余り覚えていないが、全校集会が行われたとか何とか言っていた記憶がある。

「本当やって。

何か今日、別のクラスの女の子やねんけど体育終わりに着替えようと思ったら何かまでは忘れたけど服が無くなっててんて。

それで、警察を呼ぶぐらいの大騒ぎになってん。

それから警察が指紋とか取って調べたらある男子生徒が犯人やってな、警察が他に盗んだものがないか家を調べたら私のセーターもあったらしい」

「まじかよ。

お前の学校やばすぎな。

で、セーターは帰ってきたん?」

「ううん。

お母さんがいらんて言うからもう捨ててもらった」

「だって要らんやろ?

何されてるかわからんねんで」

私の質問に妹と突然会話に入ってきた母親が返す。

「まぁ、そりゃそうやな。

前新しく買ったセーターとか弁償して貰えへんの?」

「して貰えんらしい」

「は?

それはおかしいやろ。

俺が学校に行って言ったろか?

別に学校じゃなくてその生徒の家でもいいけど」

ハッキリしたことは分からないが妹のセーターはその辺の千円二千円で買える安物では無いはずだ。

妹の通っているK高校は私立だということもあり学校指定のセーターは最低でも五千円はするのではないだろうか?

「もういいよ。

そんな大事にしたくないし」

私の母親は外面を気にするというか他人にはあまりガツガツ行かない性格の為、私を止める。

「いやいや、おかしいやん。

せめて半額は払わせろよ。

何で被害者が全額負担しなあかんねん」

それでも私はあまりの理不尽さに思わず苦笑いをしながら言う。

別に私はセーター代の五千円程の金額が失われた事に対して怒っていた訳では無い。

被害者への対応が悲惨すぎることに対して怒っていたのだ。

妹はセーターを無くしたと思い必死に探し回り、理不尽に母親には怒られるなど精神的苦痛と時間浪費をした。

母親もある訳のないセーターを探し、新しいセーターを買うという時間浪費と金銭的負担を強いられた訳だ。

それなのにも関わらずその日、妹と母親の帰りが遅いということは無かったし、後日もこのセーターの事で母親と妹が学校に行くことは無かった。

その事を踏まえると謝罪も対してされていない事が想像出来る。

それにプラスして、セーター代も泣き寝入りするなど私には考えられなかった。

「もういいって。

別にあんたが買ったわけちゃうやろ?

買ったのお母さんやねんからお母さんがいいって言ってんねんからいいの」

「私も学校に行きにくくなるのは嫌やからもういいよ」

私自身は全く納得出来なかったが、被害者である妹と母親が止めてくるので私があまりヤイヤイ言うのもおかしいと思いこの話は終わった。


皆さんは、この話についてどう感じましたか?

ニュース、ネットなどを見ていても今回の我が家のように被害者なのにも関わらず泣き寝入りしないといけないケースは多くあるようです。

私はこの事について憤りを感じています。

皆さんは、同じ状況になった時、どのような行動を取るのでしょうか?

是非一度考えてみてください。

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