ムーンストーン

ある国にとても若さと健康に執着した王様が居りましたーー

「こんな脂っこいものなどいらん!」

王様は、使用人に向かって怒鳴り皿に乗ったステーキを投げつけた。

「ですが王様、この肉は同盟を結んだ隣国の王が献上したもので…」

「うるさい!だいたい、同盟など結びたくて結んだんじゃない!こんな物捨ててしまえ!」

使用人は、これ以上王様に何を言っても聞き入れてくれないと判断し料理を片付けて下がった。

食事が終わると王様は、中庭の散歩に出かけた。

すると散歩の途中大きなケースを持った男が話しかけてきた。

「王様。王様はとても若さと健康に気を付けていらっしゃる。そこで王様、不老長寿というものに興味は、ありませんか?」

王様の護衛が男から王様を遠ざけた。

「何だ貴様!馴れ馴れしい!ここは王宮内。勝手に入ってくるな!」

護衛は、男に剣を向けると男は冷静に喋り始めた。

「私の名前は、ポリティス。ただの商人でございます。本日は王様に良いモノを持ってきたのです。」

ポリティスは、にっこりと笑みを見せた。

「ほお、私に良いモノとな?その方、見せてみよ。」

ポリティスは、王様に言われた通り持っていたケースを開けて見せるとケースの中には、黒いステッキ、小瓶に入った白い液体と同じく小瓶に入った黄緑色の液体、他に宝石が数個入っていた。

それらを見た王様は、首を傾げて男に訪ねた。

「たったこれだけか?それに何だこの小瓶に入ったモノは?」

少し苛立ちの含んだ声音で男に訪ねると男は

「ただの液体では、ありませんよ。この液体は、飲んだ者を若返させ不老長寿にする液体です。」

ポリティスは、そう言うと白い液体を持って王様に差し出した。

「ほお、若返て不老長寿か。面白い買った。」

王様は即決すると、護衛と使用人が反対した。

「王様!こんな何処の馬の骨かも分からない者の商品を買うなどやめてください!」

「そうです!王様!もしかしたら毒などが仕込まれてるかもしれません!」

止める護衛と使用人に王様は怒鳴った。

「うるさい!この私が欲しい。と言っているのだ。毒があればすぐこやつを捕まえて死刑にすれば良いだろ!」

王様は、ポリティスから小瓶を奪い取った。

「飲みますと。みるみる変化していくのが分かります。後…」

ポリティスが、言い終わる前に王様は小瓶に入った液体を飲み干した。

「うむ、変な味がするな…」

王様は、どう変わるのか楽しみにしていると護衛と使用人がざわつき始めた。

「王様の顔が、若返っている!」

「王様!お体に何か以上はありませんか?」

使用人が訪ねると王様は首を横に降った。

「おい、その者。名は、ポリティスと言ったか?金はいくらでもやる。金を貰ったらとっとと帰れ。」

王様は、自分が若返りポリティスには用がなくなったので金だけ渡して城から追い出した。

「まだ、説明は終わっていないのに。…若返り不老長寿になるには、代償があることを言って無いんですけどね…まあ、良いですか。」

ポリティスは、鼻歌を歌いながら帰って行った。

それから数日が経ち王様の回りで不思議なことが起こり始めた。

一番始めに起こった出来事は、王様の護衛にあたっていた1人が倒れて亡くなったのだ。

その次に起こった出来事は、王様の身の回りの世話をする女中の1人が急に倒れ寝込んだ。

そして3番目に起きた出来事は、王様の食事を作る料理長が、急に窶れて老け込んでいった。

この出来事は、王様が小瓶の液体を飲んでから立て続けに起き、この事は国民やポリティスの耳にも入った。

「最後まで私の話を聞かないからです。……あれは、若返り不老長寿になる変わりに、飲んだ者の回りの者の命、元気、若さを吸いとってしまうと言うことを。」

ポリティスは、笑みを浮かべた。

それからしばらく王宮内では、王様の回りで不思議な事が続いた。

「…そろそろかな。」

そう言って、ポリティスは王様の所へ向かった。

王宮の人たちを見ると、全員が暗い表情をし窶れていた。

そんな王宮の人たちを見てどこか楽しそうな表情をしているポリティスは、護衛も付いていない王様のいる部屋に入った。

「おやおや、王様お困り事ですか?」

急に入ってきたポリティスに驚いたのか、王様は椅子から転げ落ちた。

「!なんだ貴様か、勝手に入ってくるとは無礼な奴だ。」

王様は、また椅子に座り直しポリティスを見た。

「どうかされましたか?王様。護衛も付けないで1人でいるとは、危ないのでは?」

ポリティスは、王様に聞くと王様は少しの沈黙のあと口を開いた。

「実は、私の息子が原因不明の病で倒れて寝込んでいるのだ。貴様、良い薬は無いか?貴様、商人だろ?」

王様は、弱々しく言うとポリティスは鼻で笑った。

「王様、貴方が最後まで私の話を聞かず小瓶の中身を飲み干してしまったからですよ。」

ポリティスは、王様を軽蔑の眼差しで見た。

「?貴様どういうことだ!言え!言うんだ!」

王様は、机を拳で殴ってポリティスに詰め寄った。

「お前のせいで、私の唯一の跡継ぎの息子が原因不明の病に浮かされているんだ…」

王様は力無く言い放って椅子に倒れ込むように

座り込んだ。

「私は言おうとしましたが、最後まで聞かなかったのは王様です。…私が言おうとしていた事は、[不老長寿になる為には、薬を飲んだら飲んだ者の回りの者が命や元気、若さを吸いとる。]ということです。」

ポリティスはニコリと微笑んだ。その微笑みを見た王様の顔色が青ざめていった。

「で、…では、最近私の回りで相次いで起きた不幸は全て私の…せい、と言うことか…」

王様は、頭を抱え込み体が震えていた。

「どうすれば!どうすれば治る!息子を助けてくれ!お願いだ!頼む!」

王様は、ポリティスの脚にしがみついて泣きながら懇願した。

それを見たポリティスは、ニヤリと笑い王様の肩に手を置いた。

「…王様。大丈夫ですよ。貴方がこの薬を飲めばみんな納まります。」

ポリティスは、胸ポケットから小瓶を取り出した。

「本当か!これで納まるのだな!」

王様は、目を輝かせて瓶を手に取った。

「ただし、貴方がこの薬を飲んだら元のように老け込む以上に吸いとった分老け込みます。」

ポリティスは、冷たく言い放つと、王様は躊躇したが薬を飲んだ。

「貴方の宝石を頂きます。」

ポリティスが、王様に向かって丁寧にお辞儀をしたとたん王様は身悶え苦しんだ。

「うぅ"…苦しい…からだが…あつ、い……うわぁ"ーー」

王様は大きな呻き声を上げると、顔の皮膚が溶け、手、体も溶けていって骨だけになって死んでしまった。

王様の頭蓋骨の中からムーンストーンが出てきた。ポリティスは、ムーンストーンを手に取ると

「ムーンストーンの意味は健康、長寿、富。…貴方にピッタリの石じゃないですか。」

ポリティスは、鼻で笑うとそのまま王宮を出た。

それから数日後、元気になった王様の息子が跡を継いで王様になったが、同盟を結んだ隣国から裏切られ隣国の領地になった。

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