反省会

 異世界『控室』。


「んんwwwんんwwwこれは凄まじいですなwww」

「言ってるッ、場合⋯⋯ッ!?」


 エンドフェイズの『崩壊』が外に漏れ出す。メルロレロが『創造』の魔法で水色の城壁を創生して抑え込む。それを何度も何度も。被害は今のところソファ周辺だけで済んでいるが、それも時間の問題だった。


「んんwwwブーストするしかありえないwww」

「早く! もっともっと! もっとちょうだい!!」

「んんwwwもっと媚びた声で言って欲しいですなwww」


 メルロレロの魔法で『終演』を抑え込めているのは、クサハエルが魔法を増幅ブーストしてくれているからに他ならない。水色の光が煌めきを強め、重量崩壊を概念的に封じ込める。


「ジャジャーン! あたい! 起きた!」

「寝てて!! 今!! すごい!! 忙しいから!!!!」

「はらぺこちゃん! ご飯作って!」

「飴ちゃんあげるから!!!!!!」


 わーい、と遠くに投げ捨てられた包み紙に飛びつくプロローグ。


「んんwww飴ちゃん持ち歩いているとかwww関西のおばちゃんしかありえないwww」

「う! る! さ! い! もおおおおおおお!!!!!!」


 半乱狂になりながら金切声を上げるメルロレロ。ついに集中が切れる。水色の城塞が一斉に崩壊した。


「あ、やば――――」

「任せろッ!!」


 横から伸びる拳。メルロレロの表情がぱぁっと明るくなる。ゲーム世界から帰還した高月さんが、崩壊現象を拳で食い止める。

 宙に浮き上がったエンドフェイズがぽてりとソファに落ちた。振り返ると、ハートが『時空』の魔法を行使していた。


「んんwww一件落着ですなwww二人ともよくやってくれましたぞwww」

「ふぇぇ⋯⋯て、どういうこと?」


 メルロレロが気弱な疑問を発する。高月さんがにっかりと笑って拳を突き上げ、ハートが小さくピースサインを見せる。


「んんwwwどちらも見事な勝利でしたぞwwwこれはお祝い以外にありえないwww」

「すごーい、高月さん!」


 修羅場の直後でテンション高めな少女がはしゃぐ。


「いやあ、なんのなんの! 激闘だったぜ! お前はどうだ?」

「⋯⋯私は、そんなに。運が、よかった、だけ」

「はっはっは! そうかそうか! ところで俺様はらぺこちゃんだぜ!」

「そう? すぐに準備するわ」


 疲れを感じさせずに、メルロレロがエプロン装備になる。一緒にキッチンに入ってきた高月さんを手で制する。


「戦いの後で疲れたでしょう? 高月さんはゆっくり休んでて」

「んー、サンキュな!」


 崩壊したソファを修復しながらエンドフェイズを抱えるハート。目線を送ると小首を傾げられた。メルロレロはぶっきらぼうに飴玉を投げ渡す。


「高月さん、何か食べたいものはある?」

「そうだなぁ⋯⋯⋯⋯」


 少し考える。そして、ふと思いついたかのように顔を上げた。


「そうだ! 俺様あれ食べたい!」

「あれ?」









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