英雄に憧れる少年の英雄譚

《用語集》

・武法（ぶほう）

　骨格を【基骨（きこつ）】に変えることで、人体の持つ潜在能力を解放し、人をして人を超えた強さを身につける究極の体術。

　その歴史は千年を超え、大陸には星の数ほどの流派が存在する。

　ほぼ全ての流派が素手の拳法を基軸として体系化されており、流派の個性も拳法に濃く出る。武器術は拳法の補助的な立ち位置。

・基骨（きこつ）

　人間の生物としての能力を最大限に発揮できる、理想的な配置の骨格。

　常人の骨格は、日常生活の中の習慣やクセ、気質などの影響によって「歪み」が生じている。そのため常人は、自分の肉体の持つ一割程度の能力しか使うことができない。

　武法では、特殊な鍛錬によって骨格の「歪み」を取り除き、【基骨】を作り出す。【基骨】になると、今まで「歪み」によって制約を受けていた潜在能力が解放される。肉体は壮健かつ頑強になり、常人にできないような肉体操作ができるようになる。

・術力（じゅつりき）

　【基骨】となった肉体でのみ生み出せる力。

　重心操作、手足の動き、筋の動き、臓腑の動き、骨の振動、呼吸、血流、体温、意識による変調……肉体に起こる様々な動作や生理反応から生じる力を意図的にかつ合理的に噛み合わせることで、単純な筋力をはるかに超える「高度な力」を作り出し、それによって敵と戦う。その「高度な力」こそが術力。

　術力の質や効果は、その技によって異なる。岩をも砕く強い打撃力だけでなく、肉体を鋼のごとく硬化させたり、触れた相手を一時的に麻痺させたりと、多種多様な効力を見せる。

　武法を武法たらしめている重要な要素の一つ。

・亜仙（あせん）

　武法の修行の過程で肉体が変質し、外見の老化が止まってしまった人間のこと。

　発生する確率は稀。

　外見を若々しく保ったまま一生を送れるが、あくまで「不老長寿」。常人より少し長い程度で、寿命はちゃんとある。

　外見の不老だけでなく寿命すらも完全に克服した本物の不老不死【真仙（しんせん）】という存在が大陸では噂されているが、言い伝えの域を出ない。

・求真門（きゅうしんもん）

　大陸最大規模の勢力を誇る武法結社。

　伝説上の存在である【真仙】を本気で追求しており、そのためにはどのような非道さえもいとわない。

　【亜仙】という「不老長寿」を生み出した前例ゆえ、武法の研究に特に力を入れている。そのために多くの流派から伝承を略奪しているため、武法の世界では天敵として忌み嫌われている。