第2話 魔法について学ぶ

自己紹介も終わったところだし、これからどうしようか......。とりあえずこの世界について色々聞きたいこともあるし聞いてみるか。


「リリー、いろいろと聞きたいことがあるが聞いてもいいか?」


「良いですよ、私に分かることであれば」


「まず街に行きたいのだがこの近くにはあるか?」


「この近くですと『プレシスト』という街がありますね。私は今その街に活動していますので一緒に行きますか?」


「お願いしてもいいか?」


「はい!」


 近くに街があるのはラッキーだな、それにこんなに可愛い娘に案内もしてもらえるとは嬉しい限りだな。リリーは腰まである濡れ羽色の髪に深紅の瞳、そして何といっても頭部の猫耳だ。さっきからぴょこぴょこ動いていて気になってしまってしょうがない。


「その猫耳は本物なのか?」


「これですか?」


 そう言ってリリーは猫耳に指をさしながら続ける。


「本物ですよ。私は猫人族ねこびとぞくですので」


「猫人族?」


「猫人族は人族に近い見た目ですが、人族よりも聴覚が優れていて夜目も効きますよ」


 聴覚が優れていて夜目も効くということは狩りにはもってこいだな。これならこんなに可愛い娘が冒険者をやっているのにも頷ける。それにしても人族や猫人族というように種族分けがされているということは、色々な種族がいそうだな。種族についても聞いてみるか。


「そうなんだな、他にもそういった特徴を持っている種族はいるのか?」


「他の種族ですか?」


 リリーは少し考えこんで答えてくれた。


「そうですね、他には鍛冶の得意なドワーフや戦闘が得意な竜人族、魔法が使える精霊族などがいますね」


 精霊族は魔法が使えるのか。先ほど魔法が使えなかったのには何かしらの原因があるのかもしれないな。原因さえ分かれば魔法を使える可能性もあるな。


「精霊族は魔法が使えるということだが、人族にも魔法を使うことはできるのか?」


「人族には魔法は使えないですね、使えたという話も聞いたことがないです。基本的には精霊族にしか使えないですね」


 人族には魔法が使えないのか……。しかしリリーは『基本的には』と言ったな、そういう言い方をするということは精霊族以外にも使える種族がいる可能性があるな。


「『基本的には』ということは例外的に魔法を使える種族がいるということか?」


「そうですね、一応『魔族』という種族は魔法を使えていたという話は聞いたことがあります。ですが今は魔族を見かけることはないに等しいですけどね」


 魔族……か。精霊族以外にも魔法を使える種族はいたのか。ということは、魔法を使うにあたって何か間違えがあったという可能性は高いな。ゲームとかであれば魔法を使うにはその魔法にあった呪文やMPマジックポイントが必要になってくるしな。しかしこの世界にMPという概念はあるのか?そんなことを考えていると——。


「何か考え事ですか?」


 リリーは顔を覗き込むような形で聞いてきた。


「ああ、ちょっとな。魔法を使うのに必要な力とかはあるのか? 例えばMPとか」


「MP……ですか?」


 リリーは何のことだろうか? という顔をしている。やはりMPという概念はなさそうだな。


「MPというのはよくわからないのですが、通常魔法を使うには魔力というものが必要になりますね。魔力は一応大気中にあるとされているのですが精霊族以外に感じ取ることはできないですね」


 魔力が必要なのか。大気中にあるということだから少し集中して観察してみるか——。ふむ、たしかに何となくエネルギーのようなものが感じられるな。前世の世界ではこんなものは感じられなかったので、おそらくこれが魔力で間違いないだろう。


「このエネルギーのようなものが魔力なんだな」


 そう言うとリリーはすごい驚いた顔をして


「魔力が感じ取れるんですか⁉」


 と言った。魔力を感じ取ることができるだけでここまで驚かれるとは……。しかし、まだ魔法が使えたわけでないからな、あと必要なのは呪文か。


「ちなみに魔法を使うときの呪文はどのようなものなんだ? 例えば炎系の魔法だと何と言うんだ?」


 リリーはまだ驚いた顔をしていたが答えてくれた。


「呪文というよりはですね、魔法を使うときは魔法の名前を言うみたいですね。炎系の魔法だと『アグニ』だったはずです」


 アグニというのか。やまり魔法の名前が違っていたのか。となると魔法が使えるとみてほぼほぼ間違いはないな。そう考えながら近くにいたスライムに目をやる。ちょうどいい的になりそうだな。俺は魔力を込めながら魔法を唱える。


【アグニ】


 すると50センチくらいの球体の炎がスライムに向かって飛んでいく。魔法が当たったスライムは一瞬で倒され、そこには円形に焦げた大地とスライムの核が落ちていた。思ったよりも威力があるな、炎の弾はそこまで大きくは無かったが着弾したところは直径5メートルくらいの円形に焦げている。


「魔法を使った⁉」


 リリーは更に驚いた顔をしている。


「魔力を感じ取ることができるだけでも凄いのに、魔法まで使えてしまうとは……。トーマさんは本当に人族なんですか? 本当は精霊族とかだったりしないですよね?」


 今度は疑問気な顔をしながら聞いてくる。


「ああ、俺は人族で間違いないぞ。精霊族がどのようなものか分からないがな」


「ですよね。さすがに精霊族ではないですよね、疑ってしまって申し訳ないです……」


 疑ってしまったことを反省しているのか、ちょっと落ち込んだ顔をしている。


「気にすることはない」


 疑ってしまうのも無理はないだろう、なんせ人族で魔法を使えるものはいないみたいだしな。それにしても、先ほどからころころリリーの表情が変わるので見ていて飽きないな。そして何より可愛い。

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平凡な冒険者として生きていく~魔法を学び強くなる~ @Lily_0623

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