雪女
地球温暖化は進み、この地域でも異常気象も多くなっていた。夏は長くなり、冬は短くなる。
雪国妖怪の居場所はどんどん少なくなってきている。以前は広い地域にたくさんいたのだが、今やこの島が南の限界点だと聞いた。美しい自然、四季は失われつつある。それもこれも人間の自己中心的な開発、環境破壊のせいにほかならない。私たちがなぜ黙っていなければならないのか?
だが、同調する者はいなかった。それも自然の成り行きだから。人間に抗うのは危険だから。あきらめたから。過ぎたるは及ばざるがごとし、と忠告する者までいた。居場所を失った妖怪たちは気力も乏しい。ならば、私がやるしかないだろう。自分たちの存在をつないでいくために。
そう、この島国を凍らせる。そして、世界をリセットする。それができるのは私だけだろう。
いや、私たち、だけだ。
私の隣には、「ゆき」がいる。ゆきは私の体の一部と氷を使って作り上げた、いわば分身。こうやって私たちはその存在を増やし、つないできた。
「ゆき、やるぞ。準備は良いな」私の声に、ゆきは顔色を少しも変えずに答える。
「はい」その声は細いが、深く冷たく響く。私の分身であるゆきは私の思いもすべて理解しているのだ。
私は叫ぶ。ゆきの力を増やすために。
「どうしてこんな醜い、生きづらい世界になったか?私たちはどうしてここにしかいられないのか?どうして去らなければならなかったか?」息を大きく吸い込む。
「人間たちだ。あいつらは自分たちのことしか考えないからだ。自分のしたことの責任を持たないからだ。だったら、教えてやるのだ。自分たちのしたことの結果を。そして、あいつらが自分たちのことしか考えないのなら、私たちもあいつらを助ける必要はないな?」
「そのとおりです」冷たいゆきの声がする。彼女の心も凍り付いていく。
「私のために…いや、私たちのためにやれ、ゆき!」
私たちの怒りは猛吹雪となった。怒りが強くなればなるほどゆきの力は強くなる。吹雪は強くなり、気温はどんどん下がっていった。
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