第12話:回復術師は間近で見る
◇
急いで商業地区へ向かい、閉店間際の装備店でリーナ用のAランク防具と武器を購入した。安い量産型だが、今の俺たちにとっては精一杯。
品質の高い武器や防具を手に入れたければ武器屋や防具屋になるが……値段が一桁、二桁は変わってしまうので流石に無理だ。
資金の関係で俺の武器も手に入れることはできなかったが、まあそれはいいだろう。
一応は短剣を持っているし、あまり得意ではないが魔法も使える。
お金が貯まったら今度使いやすい剣を買えばいい。
ちなみに残金は……最低ランクの安宿で一泊したら消し飛んだ。
「新しい装備ってわくわくします! それに、これ可愛いですね!」
ボロ宿の一室で無邪気にはしゃぐリーナ。
量産型とはいえ、何種類かバリエーションはある。リーナが選んだのは女の子らしいピンクと白を基調としたふりふりのワンピース型ローブ。
「ああ、めちゃくちゃ可愛いと思う」
「ありがとうございますっ!」
試着しているところを見ると思わず見惚れてしまったほどだ。
まるでリーナのためにデザインされたかのようだった。それだけ着こなしが上手いということだろう。
あるいは、美人すぎて何を着ても似合ってしまうか。
しばらく喜ぶリーナの顔を楽しみながら、これからずっとこんな生活が続くのかと思うと幸せにならざるをえなかった。
さて、そろそろ頃合いかな。
「リーナ、明日は朝からギルドに行こうと思ってる。急かすわけじゃないんだが、そろそろ付与してもらってもいいか……?」
「そろそろ寝ないとですもんね! わかりました、じゃあいきますね!」
リーナは、机の上に乗っている新品のローブに両手をかざした。
ローブが淡い光に包まれ、部分的に白く発光する。
かなり集中しているらしく、リーナは額に汗かいていた。
俺も横目で見ながら分析しているのだが、これは真似できそうにない。
複雑な魔力回路を精巧に編んでいくようなイメージ。
緻密な作業というだけならなんとかなるが、どうしてこの選択肢を選ぶんだ? というな天才としか思えない発想が大いに含まれている。
こうしておよそ五分が経過し——
「できました! 我ながら完璧です!」
「もう終わったのか!?」
「はい、私が前に付与した時よりも素材が良くてスムーズでした。付与したのは『防御力強化(プロクト)』、『回避力上昇(デリスク)』、『移動速度上昇(ファスト)』の3種類です! 武器には『攻撃力上昇(レイジ)』、『攻撃速度上昇(ヘイスト)』を付与しておきますね」
さすがに一仕事終えたような疲れを見せてはいるが、確かに俺が見ても強化魔法の付与に成功していた。
さらに驚くべき——というか分かっていたことではあるが、驚かずにはいられないことがある。
普通の強化魔法は一定期間で消えてしまうので、一時間ほどで付与術士にもう一度かけてもらうか、強化ポーションを飲まなくちゃいけない。
でも、リーナがこのローブに付与した強化魔法は、永続的に効果を発揮するのだ。
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