第5話:回復術師は助ける
◇
「三十体——」
だんだんとソロのペースを掴み、たったの三十分ほどで依頼を終えることができた。
これで金貨七枚ならパーティ所属よりかなり実入りがいいな……。
普通は二〜三日かけてじっくりこなす種類の依頼らしいが、早く終われるに越したことはない。
さて、帰ろうか——
と思っていたその時だった。
「きゃああああああ! 助けて————!」
少し離れた向こうの丘から一人の女の子の叫び声が聞こえてきた。
『探知』で周囲を確認すると、三体のアンテロープに追いかけられているらしい。
見通しが良い場所だから複数体との戦闘を避けるのは簡単なはずだが、あまり戦闘に慣れていないと視野が狭くなってしまい近くの魔物の接近に気が付かないことがある。
しかし妙だな。この辺の魔物を倒せるレベルならそのくらいの力は身についているはずなんだが……。
いや、そんなことはどうでもいい。助けに行こう。
冒険者——特にソロは誰からの保護も受けられない。
ピンチの時はお互い様の精神が大切だ。
思い切り大地を蹴り、風を切って叫び声の元へ駆けつける。
「痛っ……!」
ちょうどその頃、叫び声の主は高低差で躓き、地面を這いつくばっていた。
立ち上がろうとするも足がすくんで上手く動かないらしい。
俺の足元に少女の物と思しき剣が落ちているし、少女は何も武器を持っていない。
——絶体絶命というわけだ。
俺がたまたまここにいなかったらかなり危なかったな……。
「ちょっと剣借りるぞ」
「ふぇ!?」
さっきまで使っていた短剣では守りきれない。返事を待たずに、剣を片手に魔物に向かった。
俺は回復術士である前に劣等紋——無の紋章の持ち主なのだ。
全ての紋章の特徴に特化しているので、当然回復魔法だけでなく剣も扱うことができる。
ザンッ!
剣を一振り——
問題なく三体のアンテロープを真っ二つに斬ることができた。
イメージ通り上手くいったのでなかなか気分が良い。
俺はぽけーっとしている少女に目を向けた。
金髪碧眼の美少女。歳は俺と同じくらいだから……十五歳くらいか。
やはりベテラン冒険者という感じではなさそうだが、完全な初心者というわけでもなさそうな雰囲気。
胸は大きく、ウエストは引き締まっているし、男性冒険者からは人気が出そうだな。
「大丈夫か? あっ、剣返しておくよ」
「え……あの……ありがとうございます! まさか凄腕の剣士さんに助けてもらえるなんて……!」
「ん……? 俺は剣士じゃないぞ」
「え、ええええ!? じゃあ一体……」
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