第10話『街とスキンシップ』


RE滅鬼の刃 エッセーノベル    


10・『街とスキンシップ』   




 自然と言うものは、海や山や堤防なので囲っていない川のことだと思っていました。


 お祖父ちゃんの書いたものを読むと、街の中に『自然』と言ってもいい風景が広がっていたんだと感心します。


 土がむき出しの、お祖父ちゃんが言う『地道』は十分に自然です。


 デコボコしていて、雨が降ったら、それこそ海のようになってしまった地道を長靴履いて、時には上級生のお兄さんお姉さんにオンブしてもらって登校なんて、ちょっと牧歌的です。


 近ごろはセクハラとかがうるさくって、それは大人が子どもに対してのことだけじゃなくて、子ども(高校生のわたしも含めて)の間でもセクハラの問題は大きいのです。


 お祖父ちゃんに聞くと、昔の男の子は平気でスカートめくりしていたとか。信じられません。


 中学のころ「用もないのに威勢の顔を五秒以上見たらセクハラ」とか先生が言っていました。五秒ルールとか言ってました。保育所のころ、床とか地面に食べ物を落としても三秒以内ならセーフって三秒ルールがありました。「四秒、セーフ!」なんて遊んでいる男子は居ましたけどね。


 お祖父ちゃんの時代は、そういう自然なスキンシップがあったんですね。


 水たまりを渡るためのスキンシップ。不便なことにもいいことってあったんですね。


 話を聞くと、友だちが「ちょっとしんどいよ」と言ったらオデコを合わせたり、手をオデコに当てたりして熱を計り。擦りむいたと言っては傷口に唾を付けたり。遊ぶにしても『おしくらまんじゅう』とか『おすもう』とか『プロレスごっこ』とか、スキンシップが当たり前の遊びが多かったとか。


 舗装のない地道とか、雨が降ったら出現する水たまりとか、それは街の素肌だって思うんです。お祖父ちゃんたち、昔の子どもは、街の素肌と触れ合って、街とスキンシップで育ってきたんですね。


 ちょっと羨ましいかもしれません。




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 暗い……


 暗いよね! 水たまりだよ? 


 浮かんでくるよ、60年前のクソジジイ!


 あ、クソジジイが水死体で浮かんでくるってことじゃねえから。


 そんな連想するほどヒトデナシじゃねえし。


 水かさに怯んでオタオタしてたら、「オンブしたげよう」って六年生のオネエサンが背中を貸してくれてさ、「う、うん……」とか卑屈にうなづいて、オンブされたオネエサンの温もりに劣情かき立ててるやらしいクソジジイ!


 え、まだ子どもだろうって?


 あいつはね、生まれた時からのゲスなのよ。


「どんな上級生がオンブしてくれたの?」って聞いたら。


 目線を避けてさ「ま、いろんな上級生がな……」ってさ。


 目線避けて頬っぺた染めてんじゃねえよ! 遠い目なんかすんなよ!


 水たまりをピチャピチャ歩いたり、自転車でビシャーって走ったり、それ、きっと一人でやったんだ。


 今でも、健康のためって、クソジジイは散歩にいくんだけどね、散歩っていっても自転車がほとんど。で、いっつも一人だよ。


「栞もどうだい?」


 なんて聞かれてもソッコー断るけどさ。


 あ、雨降ってきたから、洗濯物取り込むんで、ここまでな。


 栞も律儀?


 んなんじゃねえよ! 自慢じゃねえけど、小6の時から洗濯物は別々だってこと!


 じゃあな。


 



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