第22話 どっちが先か問題

幼少期、両親からインスタントコーヒの作り方を教わった。


粉状のコーヒーをスプーンですくい、コーヒーカップに入れる。


同じく、粉状のクリープと、砂糖をスプーンですくい入れる。


やり方を教わった後は、休日になると、コーヒーを入れる担当になった。


妹もやりたがったが、お兄ちゃんの仕事として譲らなかった。


しかし、困ったことに、スプーンに乗せるコーヒーやクリープ、砂糖の量、


すくう順番が、コーヒーかクリープ、砂糖が先か分からなくなった。


その度、どっちを先に入れるのか、両親に判断を求めた。


「どっちでもいいよ。」が答えなのだが、私は戸惑った。


ほんの少しのさじ加減や入れる順番で味が変わるのでないだろうかと考えた。


山の奥地のようなところで幼少時代を送った両親には、コーヒーの味を判断する程の味覚は無いと知ってはいたが、その曖昧さを放置してしまうことへの不安が優先していた。


私は、さじ加減や順番を排除する方法を模索した。


小さなビンを用意して、全て同じ量のコーヒー、クリープ、砂糖を入れ、蓋をして振り混ぜたものをカップに入れたりもした。


ただ、それもビンに入れる際の順番が発生してしまう。


コーヒー、クリープ、砂糖を全て同じ量にすることもよく考えればおかしな話である。


口の中で、この三種類の味の要素がどう組み合わさるのか。


そして、厄介なのか、水の存在だ。


この3種類の粉を最後に、お湯で混ぜる。お湯の温度にも配慮が必要だ。


熱すぎると、味覚が反応しなくなると理科の時間に教わった。


程よゐ、粉の分量と水温、考え出したら思考と手が止まった。


基本に戻ろうと考え、インスタントコーヒーの成分表の下に書いてあった、コーヒーの作り方を読んだ。


「粉はお好みの分量で・・・。」


私はコーヒー作りの担当を外れることにした。








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