第13話 思い切ってぶっつけ本番です
「ゲホッ! ごほっ……! あぁ……クソ、本当に最悪だ……」
『いやあ、まあ酷い死に様だったなぁ! 見ごたえがあったぜ! 特に……』
「それ以上はいい……少し休もう」
そう言って近くの椅子に座る。息を整えていく。死にすぎて慣れてきたのか、それか今回に関しては現実の死が一瞬すぎて思ったよりも負荷が少なかったのか。
……今回は毎回最初からになるのは仕方ない。とはいえ、ヒントが少なすぎるのでどうにかして回収したい所だ。
(……せめて何かもうちょっと情報が手に入ればなぁ)
そう思いながらぼうっと大学を眺めて……ふと気づいた。
大学に置いてある掲示板。そこには様々な張り紙がされている。サークルの勧誘、イベントの開催告知。その他諸々。
その中で、興味があるチラシを見つけた。
「……美術展の開催告知」
それは、毎年の行事ということが書かれていて……前年度のことも多少だが書いてある。
そこには美術展は厳正な審査をして複数の参加サークルから選ばれた作品を展示すると書いてある。そして……前年度の大賞は、この学校から出ていると書いてあった。
(……なるほど。前の周回で冬希ちゃんが言っていたのはこれか。)
これについて詳しく知ることが出来るなら……と考えて、そこで風花さんに声をかけられる。
どうやら時間らしい。いつもと同じように会話をして歩いていき……そして、芸術サークルに到着してから驚いた顔をして同じように会話をし……サークルの中に行く前に風花さんへ質問をする。
「いえ、やりたいことをしているのは良いことだと思いますよ。そういえば、大学の入口に張り紙がしてありましたけど芸術サークルでは展覧会に出展するらしいですね」
「あ、ご覧になられたんですね! 来月にあるんですよ! うちのサークルからは先輩の一人が選ばれて大賞に選ばれたんです! 応募するサークルが多いので一つのサークルから1点しか選ばれないおまけに、美術に力を入れている大学もある中で選ばれるなんて快挙なんですよ!」
「へえ、それは凄いですね」
……間違いなく間時さんだろうな。その大賞に選ばれたというのは。
さて、これ以上会話を長くすると行動が変わるかも知れない。ここで会話を切っていつもどおりの流れに戻すのだった。
そして、記憶どおりに行動を取る。
違和感はあるだろうが……ここまでの流れで警戒をし続けて間時さんから殺されることなく、記憶通りの地点までたどり着く
「なら、聞いていいのは冬希だけね? それ以外には聞くのは駄目ってことで。もしも聞くならゲームは終わりだよ」
「……了解したよ。冬希ちゃんには何でも聞いて良いんだね?」
「案外素直だね? まあ、聞き出せる範囲で聞いていいよ」
ニヤニヤとしながらそんな風に言う間時さん。
……まあ妨害をするし、冬希ちゃんからの情報を引き出す難易度を考えてそう言っているのだろう。
さて、前回聞いたのは盗まれたアクセサリーについて……だが、それはあくまでも内部犯を確証させる要素でしかなかった。
(だから、今回聞くべきは……)
『ひひ、誰が犯人かを割り出す情報ってわけだな?』
(そうだね……さて、盗まれたものに関して他の人から聞けたら多少は話が早いんだけどなぁ)
考える。思考を回して……そして、冬希ちゃんに声をかける。
「少し良いかな?」
「ん? なんすか? 自分に聞き込みっすか!? いやー、なんか刑事ドラマみたいでドキドキするっすね! 何でも答えるっすよ!」
「やる気満々だね」
「まあ、先輩たちは制作で忙しいっすからねー。ちなみに自分も作ってるっすけど、スクラップアンドビルドっす! ぶっ壊して作る! これの繰り返しなんで新鮮な刺激はいつだって大歓迎っす! まあ、ぶっちゃけると詰まってて気分展開したいっす!」
「なるほど。そういえば、美術展に出すんだよね? 冬樹ちゃんもだすの?」
その言葉に、意外そうな顔をする冬希ちゃん。
「あれ? 知ってるんっすか? そうっすね。美術展はうちのサークルの分かりやすい目標っすからねー。まあ、自分とか相葉先輩は別のコンクールで美術展には出さねーんで忙しくねーっすけど、代表と副代表は忙しいっすよねぇ」
……なるほど。美術展への出展で枠を取り合って……というところか。
嫌がらせというよりも美術展に間に合わないように妨害をする。そう考えれば確かに納得はできる。
さて、問題になるのは……どちらが行動に移したのかという所か。
「へえ、二人は違うんだ」
「そうっすよ。美術展のメインは絵画部門っすからねー。うちのサークルはそこそこ実力あるんで一人は確実に出展できるんっすけど、前回は彩子ちゃんが見事に大賞として飾ったんっすよね! すげーっすよねー! 同期として鼻が高いっすよ!」
嬉しそうに語る冬希ちゃんは、純粋に仲間を褒めている顔だ。
……この子すら殺してしまうんだよなぁ……間時さん。
「なるほど。今まではどうだったの?」
「そうっすねぇ。代表が基本的に美術展に参加してたことが多かったっすよ。とはいえ、副代表も惜しい所まで行ってて……なんでも、自分たちが入学する前はどっちが入賞するのかを更に上の先輩が賭けてたとか……」
「冬希、ちょっといいかな?」
と、そこで間時さんからのストップが入る。
……事件について、大きく前進して知る事が出来た。
(間違いない。盗難事件じゃない……これは間時彩子に対する妨害行為。そして、その理由は美術展に出すための作品を出させないためかな)
『くだらねー! ひはは! どうせそれで勝っても意味なんてねえってのになぁ!』
(……まあ否定はしないけどね。後ちょっとなんだけど……ただ、どっちかわからない。これが問題だ)
……他の被害についてを考えていく。
デジカメに財布、砥石にアクセサリー。おそらくこれらの物品は間時彩子に対する嫌がらせを隠すために盗まれたものだ。
法則性というものは見つからないが……いや、それぞれが盗まれたものに対しての活動への被害が少ないという所が共通点か?
「探偵さん、申し訳ないっす! ちょっと席を外すっす!」
「ん? ああ、大丈夫だよ。質問に答えてくれて助かったよ。ありがとう」
「いやいや! この程度全然構わないっすよ!」
そして出ていく冬希ちゃん。間時さんがこちらに来て、周囲を確認して表情を崩す。
「探偵クン、どうかな? 答えにはたどり着いてそうだけど」
「……あとちょっとかな。ただ、残った最後の要素が埋まりきらなくてね」
「へえ、すごいね。探偵クンって本当に名探偵なのかな?」
そういう間時さんの表情は……うわ。
その表情は知っている。マガツが本気で楽しんでいるときみたいな顔だ。
「……申し訳ないけど、やめてくれないかな? 名探偵なんて最悪だよ。だいっきらいなんだ」
「そうなの? 名探偵が嫌いって変な趣味だね」
「探偵なんて地道な仕事なんだ。派手でマトモじゃない名探偵なんて嫌いだよ」
「ふーん……」
その言葉の真意を聞かれる前に、風花ちゃんが窓の外を見て僕に声をかける。
「あれ……? あの、探偵さん。冬希先輩が呼んでますけど」
「ああ、行っていいですよ」
さて、覚えている。ここであの証拠に集中しすぎると上空から何かが落下して殺されるのだ。
そして外に行き、冬希ちゃんと会話をして何かが埋まっているらしい場所にやってくる。
「さて、どうするっすか!? このまま掘っちゃうっすか!?」
「ああ、ちょっとまってね……」
と、そこで窓に視線を向けるとそこにはこちらを間時さんがじっと見ている。
僕が不審げな視線を向けて一歩下がると……頭上から突然何かが落下した。それを見て、冬希ちゃんが声を上げて腰を抜かす。
「ひゃわっ!? な、なな……上からなんか降ってきたっすよ!?」
「……危ないなぁ。調べてたら死んでたね」
「れ、冷静っすね!?」
間時さんはこっちを見て……ああ、やっぱり楽しそうにこっちを見て笑顔を浮かべている。
……多分、こう言いたいんだろうなぁ……「その程度の罠は、乗り越えて当然だよね?」とでも。
「……二階、いや、三階かな? 石膏像か……結構重たいね。この上って何かあるの?」
「あ、え、えっと……うちのサークルが物置にしてる部屋があるっす。マネキンとかそう言うのおいてる部屋っすね」
……あー、確か事件の時にも使われてたな。死体をマネキンに混ぜて間時さんが隠してたんだ。
まあとりあえず埋まってそうな場所を掘ってみるが……なにもない。
「……あれ? なにもないっすね……」
「そうだね……勘違いってのはたまにあるよね」
これ多分、マネキンを落とす実験で出来た穴を隠すために埋めたんだろうな……
いつの間に埋めたんだと思ったけども……まあ、前から準備していた仕掛けというわけか。
「探偵さん、そこになにか落ちてますよ?」
「えっ?」
猫をかぶった間時さんからそう言われてみてみると……たしかに何かが落ちている。
記憶が正しいなら、先ほどまでそこには何も落ちてなかったはずだ……間時さんを見ると、ニコリと笑みを浮かべる。
ああうん……拾えってことね。
「なにっすか探偵さん! 拾ってみましょうよ!」
「ああ、うん」
そして拾ってみる。
「……これは」
それは、事件の最後のピースとなるかも知れない証拠だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます