第9話ピンクのグロス③
落ち着いてやっと話ができる。ただの愚痴を聞くお泊まり会だったはずなのに。
「茜ちゃん、お願いがあるの、恋人になったんだから楓って呼んでほしいなぁ~」
「楓ちゃん、じゃあ、私にも楓ちゃんにお願いがあるんだけど」
「なんだろ~?」
「私も、楓ちゃんが持ってるピンクのグロスと同じのが欲しいの、楓ちゃんはいつも付き合った彼女の口紅にあわせてるけど、楓ちゃんには私がしてる適当リップなんか似合わないから……私があわせたい」
重い女だと思われても、子供じみた独占欲だと思われても、楓ちゃんの今までの女達とは違うことがしたかった。
「いいよ、なんか嬉しいな、あたしから言うばっかりだったからな~でも女遍歴知られてるのやっぱりかなわないなぁ~」
「ふふっ」
「じゃあ、今からグロス塗って一緒に写真撮ろうよ~」
「えっ、お風呂入ったのに?」
「唇だけメイク落としシートで拭いて顔洗ったら大丈夫だよ~」
戸惑う私をよそに楓ちゃんはバックからメイクポーチを取り出す。
透明なリップクリームを下地にして、その上からピンクのグロスを楓ちゃんが丁寧に塗って仕上げてくれる。友達から恋人になったばかりの好きな人にメイクをされるなんてなかなかない。
「あたしにも塗ってくれる?」
こくん、と頷いてリップとグロスを受けとる。手の震えをなんとか誤魔化して楓ちゃんの綺麗な唇にはみださないように塗る。
「は~い、撮るよ~」
一緒に撮った写真は目は真っ赤、唇以外はすっぴん、パジャマとさんざんだったけど、二人の宝物になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます