イマジナリー・ラブコメ

ぐみねこ

一章 空想と現実の――。 

プロローグ

 教室の中で、ひときわ目立つ存在がいた。

 彼女の存在は、周りのみんなを取り囲んで笑顔にしている。それが当たり前の空間で。

 だけど、不思議とその姿は曖昧で、白く儚い影はゆらゆらとゆれている。


「タピオカって知ってますか? すっごくおいしいんですよ!」


 とても魅力的で目が離せないほどの美少女のはずなのに、俺の目には、彼女の姿だけに靄がかかっていて見えない。


「あははー、――は本当に、ちょっとズレてるよねー」

「そうそう! タピオカについてそんなに幸せそうに話す女子、――しかいないって!」

「――! 俺らとトランプで遊ぼーぜ!」

「いいですね! 皆さんもどうですか?」


 そんな問いかけに、バラバラに話していたクラスメイトがみんな彼女のもとに集まっていく。


「――がやるならあたしもー!」

「面白そうじゃん!」


 クラスが、彼女を中心に動いていく。

 クラスが、彼女によって作られていく。

 まるで、世界の中心に立っているように、誰からも愛される彼女の姿を見て、思う。

 俺は、本当にこの世界に関わらなくていいのだろうか。

 俺は、本当に自分の世界だけを見ていたいのだろうか。

 どこかで、世界から見放されているような、妙な感覚が、俺の中にはあった。


「空さん、一緒にやりましょう!」


 ふと、彼女は俺の目の前で手を差し伸べてきた。

 俺は、その手を掴もうとして――。


 目を、覚ました。

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