第13話 旅の理由
姉さまも知っての通り、小さい頃のわたしは、病弱でちょっとの事で寝込んでしまう子でした。それはお母さまも同じで、わたしの記憶の中のお母さまは、何時もベットの上だった。
わたしとお母さまとの僅かばかりの思い出は、物語の語り聞かせ・・・・『三人の勇者と明けぬ夜』 『七色の竜』 『魔族マリアベル』 『エクリプスの騎士』 『オールブレイカー』と言った子供の頃、一度は聞いたことのある御伽噺。お母さまは、楽しそうにお話ししてくれた・・・そして物語を聞かせ終わると必ず言う言葉があった。
このお話にはね。元になった書物があるのよ。伝説記(レジェンダリー)って言うんだよ。お母さんね、伝説記を自分で探し出すことが昔、夢だったんだ。でもね、もっと大事なモノが出来ちゃったから諦めちゃったんだ。
良くわかんないけど、その何とかってのシフォンがママの変わりに見つけてあげる。
じゃぁ、シフォンちゃんに任せちゃうからね~
うん!絶対ぜーたい見つけるから。
それから暫くしてお母さまは天に召された・・・・そして何故か病弱だったわたしが嘘の様に元気になっていた。
今となっては、約束と呼べる代物ではない事はわかっている。それでもわたしは、学院に入学した時からわたしなりに調べてみた。
お母さまがサンカレンの図書館で司書をしていた事。
伝説記(レジェンダリー)の事。最近、66篇目の伝説記(レジェンダリー)が発見された事を知った時、わたしは、居ても立っても居られなかった。
わたしにも発見の可能性があるんじゃないかって。そして、見つけて締まったお母さまが残した伝説記(レジェンダリー)の手書きの写しを。
そして・・・どうしてかはわからないが、あの旅人の事を思い出す・・・・
色んな事を調べる内にお母さまの夢が、わたしの夢にもなっていたの。旅に出て、外の世界を観てみたい。それで伝説記(レジェンダリー)を見つけられたら・・・・
「だから姉さま、お父さま達の説得を手伝って欲しいです。」
「お母さまの夢か・・・そう言えば伝説記(レジェンダリー)の事を良く話されていましたねお母さまは・・・・懐かしいです。ところで、写しと言うのは、何処で見つけたのですか?」
「書庫で資料を漁っていたら、たまたま見つけました。今ここに・・・」
机の中から写しを取り出し、姉に手渡した。
「あら、これは・・・・」 写しを手にした姉は笑みを浮かべた。
「どうか成されましたか姉さま?」
「ええ、この写しを見て思い出した事があるの。あのお母さまが珍しく興奮なされていた事を。」
「お母さまが興奮???」
「古代文字の下に今の文字で訳文が書かれているでしょ。前は訳文は書かれていなかったのよ。」
「お母さまが訳されたのでは?」
「違うわ。古代文字を読める人が現れたからよ。はっきり覚えているわ、あの男の人が伝説記(レジェンダリー)を読み上げるのを必死に書き写すお母さまの姿を。あんなお母さま初めて見ましたから・・・・」
「・・・・・その古代文字を読める人とはいったい・・・」
「確か、お母さまの遠縁にあたる方だとか・・・・」
「遠縁?おかしくないですか。確かお母さまは、孤児で施設で育ったって爺やから聞きました。」
「あら、そうね・・・記憶違いかしら・・・・」
「爺やに聞けば何か解るかも、今度、聞いてみましょう。」
「ところで、説得の件なんですが・・・」
「シフォンちゃんが旅に出たい理由はわかりました・・・けど、旅に出るのは良いでしょうでも何処に行こうと言うのですか?」
「目的地は、ヴィクトリア皇国です。」
「ヴィクトリア皇国・・・・北西の島国ですね。どうしてそこなのですか?」
「友達が居るんです。以前、留学で来ていた友達が・・・・それにヴィクトリアには、未発見の伝説記(レジェンダリー)がある可能性が高い土地なんです。」
「留学生の友達・・・・もしかして、グレイスちゃんの事ね。何度か家にも遊びに来てましたなね。」
「2年前、彼女が帰る時に約束したんです。卒業したら会いに行くって。」
「・・・仕方ありませんね・・・手伝いはしますが、難しいと思いますよ。お父さまもお兄さまもあなたが、宮廷魔導士になる事を心待ちにしてましたから。」
「ありがとう、姉さま。明後日のわたしの誕生日には兄さまも王宮から戻られるだろうから、その時に皆に話します。」
「そっか、シフォンちゃんも、もう15歳になるのか・・・晴れて成人になるのね。」
「成人なんて、形式的な物じゃないですか・・・興味ないです。」
「ねぇ、シフォンちゃん。やっぱり今からでも遅くないから、誕生パーティーをしない?卒業前の良い思い出になると思うんだけど、お友達も呼んで・・・・」
「誕生パーティーどころではなくなると思いますから・・・・」
「初めっから誕生日に言うつもりだったのですね・・・当然、家族会議になるでしょうから・・・」
「姉さま、わたしの我儘聞いてくれてありがとう。」
「この貸しは、高く付くからね~覚悟しておいてね。」
それから姉妹は、夜が更けるまで語り明かした。そして翌日を迎える事になる。
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