03 看央
「ほら。男子勢はゲームセンター行ってなさい」
「はいはい」
「今日新作のゲーム来てるな。やり込んでいくか」
男ふたりがいなくなったのを確認して。
三何に抱きつく。
こういうとき、三何は何も言わず、抱き返してくれる。
もうすぐ、両親の死んだ年齢になる。こわかった。自分も、両親のように、突然死んでしまう気がして。
「三何」
「なあに、看央ちゃん」
「あした私が死んだら、どうする?」
言ってから、後悔した。何訊いてるんだろう私。ひどいことを。言ってしまった。
「ええとね。悲しむ。泣く。めちゃくちゃ泣く」
「ごめんなさい」
「なんで?」
「それは」
「人はいつか死ぬじゃん。死んだら悲しいじゃん。それだけだよ。だから悲しむ。それだけ」
「そっか」
彼女の温もりだけを感じながら。安心している自分がいる。
生きろと言われなかった。死ぬなと、言われなかった。死んだら、その事実すら肯定してくれる。私の決断を尊重してくれる。それが、どこまでもやさしく、暖かかった。
「いま死んでもいいとか思ったでしょ」
抱きしめる腕が、ちょっと弱まる。
「だめでぇす」
彼女。離れる。
「わたしが側にいるので、まあ、あきらめてください。勉強おしえてもらわないといけないから」
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