第21話-② あ゛んん゛~あぁぁ゛なっつ休みい゛い゛い゛!!!

季節はまだ“夏”―――夏と言えばそ・う!!


「いやあ~それにしても持つべきは“名家”の知り合いだよなあ~。 お蔭でいい席が取れたってもんだぜ。」

「(む~~~)竜児、それはないのではないのか? そんな事で私や姉さまとの繋がりを感じるのは、ちょっとどうかと思うぞ。」

「いいのですよ、巴惠。 事の如何がどうであれ、竜児様が私の事を必要と感じて下さる! 嗚呼~~これこそ幸福の極み!」

「あのーーー巴惠だけハブられたのは私の気の所為ってことでいいですか?」

「靜香ったら相変わらずよね~~それより乃亜、そんな事言っちゃダメよ。 折角の花火大会とやらが湿っぽくなっちゃうじゃないの~。」


『夏祭り』―――の定番と言えば、夜店の屋台だとか、花火大会にあるのではなかろうか!!

いやもうここは断言せざるを得まい!『浜辺の水着』と双璧を為す、夏を彩る婦女子の服飾と言えばああ~~!そう『浴衣』だっ!!

水着と同じく皆思い思いの…それでいて個性を象徴する色合いに―――少しばかり大人の色香漂うその佇まい……

ん゛~~~至福だっ!眼福だっつ!!

普段は騒がしい吹那も、この時ばかりはと清楚にして大人しく……ううむ、どこかキービジュアルである『魔王シェラフィーヤ様』とダブって見えちまったぞ……

それに小生意気な事ばっかり言ってやがる妹の乃亜も慎ましやかにしている……ああ、なんて『浴衣』と言うのはこうも人格を変えてしまうのだらうか……

それにしてもアレだよな、源野姉妹は普段からどう言う生活をしているのか判るくらい、浴衣……というか、和様式の服飾の立ち居振る舞いというのが堂に入っている―――こいつはポイントが高いぜ!!


「それはいいんだが……玲奈の姿が見えないよな。 あとおこばあちゃまと箱入りお嬢も。」


そう……異変―――異変と言うならを語らずにはいられなかった。

普段はその熱烈に過ぎる猛アピールをブッ込んで来る、自称“オレの嫁”の猪狩玲奈(クローディア)が、この夏の一大イベントに絡んでこないという魔訶不可思議……うむぅ……なんだか裏で好からぬ状況が進行しつつあるのではなかろうな?

{*それ、盛大なる「フラグ」DEATH。}


なにか、気になる……何か気になる―――のだが、それ以上に気になる事がオレにはあった。

そう……2人も見えないのだ!

「なあ……吹耶、正直に答えてもらいたい―――」

「ふえ?どったのーーー?竜児。」


「トラブルメーカーであるお前の事を『監視』の役目で訪れている黒江崎真美(エメス)と、ぬぁぜかこちらに居ついちゃってる猫(ミリアム)の事についてなのだが……」

「ふえっ??ちょっとどぉいう事よぉお! 私の事…私の事をトラブルメーカーですってええ?ま、間違っちゃいないけどォ……もうちょっと私に優しくしてよぉ!」


「をい、うるさいぞポンコツ―――それよりあの2人はどうしたんだ、今日と言う日に限ってオレ達の視界に現れない……って言うのは、何か変じゃないか?」

「うぅっ…確かにそうだけどぉーーーそう言えば、活動資金が尽きそうだ……ってエメスがボヤいていたような?」


「活動資金??まあーーーこっちには色々(ガス・水道・光熱費もろもろ)要るからなあ……なるほど、だからこうした一大イベントの機会に稼ごうって話しか。」

とまあ、それはそれで納得のいく解釈となった―――解釈となった……は、いいのだが、同時にオレは重大な事を欠落させていたのだ。

そう―――・がっつ?!


「あああああ~~~~わーたくしの愛おしい旦那様ぁ~~♡ 是非ともこのわたくしめの“熱ぅい”想ひ―――受け取って下さぁ~い♡♡」

「ぐぅわ゛あ゛っ! 熱゛熱゛熱゛熱゛熱゛《あ゛ぢゃ゛ぢゃぢゃ》あ゛~~~!!! で、出来立てほやほやの(広島)お好み焼きがあ゛あ゛~~!」

「おのれ!玲奈!!団長様である竜児様に狼藉を働くとは不届き千万!!! 即刻打ち首獄門にしてくれよう!」

「それより最早“出来立てほやほや”の鉄板焼きは凶器も同然!―――と言うより、なぜに玲奈殿は(広島)お好み焼きを?? 」

「フッ―――聞くだけ愚問というモノ……このわたくしが、異種格闘技で稼ぎを出せるの女とは思わない事ですわぁ。」


なるほどぉ……つまりお前(玲奈)も、この一大イベントで稼ごうって肚なのね? だけどさぁ……いきなり出来立てほやほやを口に突っ込まないで? 口ん中火傷しちっゃたじゃないか。

やはり何気にスルーするというのはよろしくなかった―――みたいで、盛大な後悔をしつつオレは、口の仲の火傷を治療する為、今は『かき氷フラッペ』を大量に口に含んでいる。

ん゛~~~それにしてもアレだよな、口の中の熱さは回避できたのだが……氷をな、大量に口に含んだら、どうなるか知ってるか??

「(ガリガリ)くひぃ~~~たまらんっ! 頭ン中が“キィーン”とするぅ~~~!!」

「まあ!それは大変、ねえ大丈夫?竜児ぃ…」

まあ、こう言った一連の流れと言うものは、生体反応の一部でしかない―――とは言え、こいつ(吹那)はオレの事を心配してくれてんだなあ……

「吹耶ぁあ~?なにあなたカマトトぶって、兄さんの株上げようとしてるんですかぁぁ……」

「ふひっ?! の、乃亜……い、一体何のことを言っているのかしらあ~?」(よそよそ)


「今の一連の現象、生体反応からのものだと気付いちゃっているんでしょうに。 白々しいですよねえ~~?」

「をい、こら、ポンコツ―――おまいそれは本当か?」


「………………はぃ。」


「返せやゴル゛ァ゛~! 今一瞬でもおまいの事を“好い”と思っちまったオレの感動を、返せやあああ~い!!」


全く―――油断も隙もあったもんじゃないな。 オレの弱った所にかこつけて迫って来るなんて……まあ今はその事は頭から切り離そう、折角愉しみにしてた夏祭りが台無しになっちまう。


そう―――今は“夏”……今こそは夏なのだ! そして夏祭りと言えば定番の―――


「はぁ~い、いらっしゃあ~い、『お化け屋敷』よお~~。」


定――――番――――の…


「おい箱入り、おまいはここで何をしている。」

「うげっ!!り、竜児?? なぜあんたがこんな処に??」


「いやまあ、地域の夏祭りだったりするからな? それよりオレの質問に答えろやい。 なぜにおまいがこんな事(お化け屋敷の呼び込み)をしている。」

「くぅぅぅっ……く、屈辱だわ!一番知られたくないヤツに知られてしまうなんて! けど仕方がないじゃない!こちらで生活をする為には色々物入りなのよ!!」


「なるほどーーーそこんところは吹耶も言ってた事だしなあ? だけどな、お前がお化け屋敷の呼び込み―――って、なんで? 言ったらお前は中でお化けやってる方が堂に入ってるんじゃないか?」

「ちょっ!なにふざけた事ゆってんのよ!こんな狭い暗がりの中で私に何を求めているって言うの??」


えっっ……何この?言ってることがワケ分かんないんですけど。 て言うかお前は泣く子も黙る『吸血鬼』だろがい! そんな超級の魔族が“狭くて暗い処”が怖いだとぉ??

「おい、真実―――ここの責任者だせやあぁ! そんなみょうちくりんな事をほざいてやがるヴァンパイアの小娘に一言物申したい事があるってなああ!!」


「うるさいぞ、なにを表で騒いでいるのだ。」


あ゛ーーーーーやっ……ぱしここにいたかあ~~。 てか、アンデッドの魔王がなぜにお化け屋敷のお化けやらんと行かんのだ?

「なぁぁ……ミリアムちゃま、なんで魔王のあんたが中のお化けやって、下っ端の箱入りが楽してんです?」

「む゛ーーーそう言われても仕方が無かろう。 エメス嬢は小さい頃から暗い所が苦手なのだ。」


「……『吸血鬼』なのにぃ?」

「例え『吸血鬼』であろうとも、苦手なモノは苦手―――と言った処よ。 それに我もいささか愉しんでおるでな。」


エメスよ―――もうお前、『吸血鬼』なんて辞めちまえよ……そう思ったものだったが、最近見慣れちまってるもんなあ……『魔王』だったのに中身はポンコツな件。


「えっっ??なになに?どうしたの竜児。 私の事を見つめてくれるのは嬉しいんだけど、どこかあわれみにも似て、どこかさげすみにも似て……って言うか、そんな死んだ魚の様な目で見ないでえぇええ~!!」


オレの熱ぅ~い眼差し(軽蔑)の意味する処が判ると言う事は、まだ一縷の望みはあると見ていいな。 てか、自覚してんなら直せやい!

まあそれはそれとして、満更知らない仲じゃない訳なんだし、ここは一つ……

「まあ仕方ないから利用してやるよ、お化け屋敷。」

「なに、その言い方!べ、別に利用したくないんだったら利用してもらわなくてもいいんだからねっ!!」


「おい乃亜、兄であるオレの事を散々“ツンデレ”だのと言ってくれやがったが…いいか!これがほんまもんの“ツンデレ”じゃああ~!」

「わー凄い凄い(棒) 普段は大人しそうにしている黒江崎さんはツンデレさんだったんですねー(棒)」


「安倍さん??! あ、あの今のはご内密に……」

「ではお化け役やって下さい。」


「……は?……え?? いやでも、先程ミリアム様とのやり取り見て……」

「お化け役を、やって下さい。 さもないとうっかり喋っちゃいそうです。」


最早説明するまでもないまだが、エメスがこちらへと来た(来させられた)理由の一つとしては、シェラフィーヤの監視にあるのだ。 その為にはオレ達が(集中して)通っている高校に、転入生として潜り込み調査を行うというモノなのだが、転入先の学年が乃亜と同じくの高校一年生だったもんで、早くも上下関係は構築されてしまったようだ。

ううむ、我が妹ながら抜け目のない奴め、嫌がる真実を無理矢理お化け役に押し付けちまうとはな。

さてそれでは意気揚々とエメスを怖がらせてやろう……と、思ったのだったが―――


「竜児様、不肖この靜香めがお供をさせていただきます。」

「いいえ、愛する夫の随伴を努めるのは妻の役目……友達未満の恋人未満であるお前は淋しく一人で回るがいい~!!」

「いえいえ、ここは同じ学年同じクラスにして、隣りの席であるこの巴惠の役回り、さあいざ見果てぬ戦場へ繰り出そうぞ!」

「皆何を言っているのか判りませんが、兄さんと回るのは血を分けた妹である私の特権! さああ黒江崎さん、タイミングよく私を驚かすのです!そうすれば公認で抱き付く事が出来る! そしてそのままぁ~~?」

「フッ、詰めを誤ったようね……乃亜。 私の竜児は、わ・た・し・だ・けのモノ!  『全種属対応魅了スピーシーズ・チャァァアムッツ』!!」


なずぇかオレの周りには、いつもオレを取り囲んでいるいつもの面々……オレはエメスのヤツのベソを掻いている面を拝みたかったのにぃ。

しかもおまいら、出来合いのお化けなんざ怖くないだろが! なのに……


痛痛痛痛い゛でででっっつ―――??! 誰だ!きつく締め上げるのは!胃の内容物なかみが出るぢゃないか!!」


「ああ…でもわたくし、作り物とは言えお化けと言うものは怖いもの……ですから本能的に抱き付いてしまうのですわぁ~ン♡」

「それは寝言?猪狩玲奈……常日頃はこんなチープな造形物よりも気色の悪い対象を素手の拳ステゴロで駆逐しているあなたが!」

「り、竜児、だだだだ大丈夫だぞぉ~?わ、私が近くにいるからには―――っっ!」

「意外でしたね、まさか巴惠がお化け苦手だったとは。」

「あ、あっ!玲奈に巴惠そんなに強く抱き付いちゃったら私の竜児がのしいかみたいになっちゃうじゃないの!」



えっ……なにあの阿鼻叫喚。 と言うより最早あれってレイドPTじゃないのお?!あんなの私一人でどう対処しろっていうのよぉ……。

それにいつの間にかミリアム様いなくなってるしい~~~ま、まあ騒がしいからちょっとは怖いのは紛れるんだけれどもね。

{*実はこの時ミリアムおこばあちゃまは、夜店巡りをしていたみたいで、とっても満足気だったみたいである。

尚エメスも、足下を這い回った「黒いナニカ(ゴキ)」に驚き、竜児に飛びついてしまって取り巻きの腐ぢょし達に退治されたようである。}



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