第4話 “人の影”―――忍
“森”と言うものは、木々が乱立し―――地面には
そこをオレは、今回の―――オレを倒そうと息巻いているオレの“関係者”を相手取る
その“自称”を、このオレも信奉する『魔王シェラフィーヤ様』と同じ名前だとぬかしやがるエルフの幼女もついてきたわけなのだが……
ヤレヤレ―――ハンデ戦かよ……
だが、だからと言って“お前”相手じゃハンデにすらならねえ事を、身に沁みさせて覚えこませてやるぜぇ……?w
オレは、オレが得意でいられたあの世界―――オンライン・ゲームの
オレが所有するスキルは実にありきたりなものだ―――「マーキング」と「指弾」……
割とどこにでもある―――そして誰もが初期で習得できるスキル……
しかしオレは、そのスキルをいまだに所有している……
それは何でかって―――? そんなの決まってるだろう…………
* * * * * * * * * *
私は―――彼が、私の国で抱えている暗殺部隊の一人を倒した一部始終を見ていた……。
固く小さなものを“指”で“弾”く―――あれは「指弾」……
それを暗殺部隊の一人の足元や膝に放ち、体勢を崩されたところで目にも見えない素早さで背後に回る……
あれは―――「縮地」? いやけど……どこか違う―――
「縮地」では、急に背後からは現れたり出来ないはず―――
それが…………そういえば彼、あの時やたらとその辺を触っていたけど―――あの動作とは関係があるの?
そうこうしている内に、“影”がザワつき始めた―――
今なら判る……この森には、私たち以外の何者かが―――いる!!
それは一つの“黒い”塊だった―――それはまるで“影”……
捉えどころのない不確定な無機物―――
か、と―――思いきや……
その黒い物体から浮かび上がる二つの紅い光……
あれは“目”だ―――
あれは……“目”だ―――??
何で影に動物のような“目”が?
「フン……ようやく出てきやがったな―――『ダンゾウ』!」
「『ダンゾウ』? ……って―――」
「さっき言ってやったろ? オレの関係者だよ―――」
“彼”は―――彼自身の知り合いだったから……だからこの気配に気づいていた?
でも……どうして?知り合いなら、なぜにこうもお互いの殺気を交錯させていられるのよ!?
いや……けれどそれは間違いではない―――
そうした事を予測できずにいたから、私はここにこうして生きて恥を曝している―――
しかしそんな思いとは裏腹に、“彼”と“影”は戦戟を交じり合せる……。
その“影”は、左に右に、上に下に―――と、自由自在に駆け巡り実体を紛らわせようとしていた。
こんな動き……初めて見る?!
私の国お抱えのシャドウだって、こんな動きをする者なんていないはずなのに―――??
だが、いまだ自分の名前を語らずの“彼”は、落ち着きを払ってみている―――
そうそれは……
「フン……なるほどなあ―――いいモンを見させてもらったぜ。 お陰でだいぶ分かってきたというもんだ……。」
“減ラズ口ヲ―――”
“ダガマアイイ……コレデ 終ワリニ シヨウ―――”
「(ひっ……)これ―――どこから……? こえが……はんきょうしてる?」
「ああ―――違ぇえねぇw こいつはヤツ―――オレの知り合いである『ダンゾウ』のスキル。 ≪音遁:
するとどこからか―――無数の“何か”が降ってきた……と思ったら、急に動けなくなってしまった。
えっっ―――ま、まずい……まずい、まずい!
こんな状況で襲われちゃったりしちゃったら……!
「フフン……宛てが外れてるぜぇ?w オレはここにいる―――それとも手許がくるっちまったかあ? お前らしくもねえ……それとも、このチビエルフが目障りに感じたか? まあ実際、“チョロチョロ”と
“影”からの攻撃を―――失敗したものと
すると私の目が捉えたのは、まるであり得ない状況だった。
何という事だろう……“影”が動いている―――?
一つの“影”が、実体を伴わずに……ひとりでに
私の知っている常識が通用しないと分かってから、私は何も言葉を発せないでいた……ただ彼は、今起こっているのがさも当然のごとくに、対処を―――状況を開始しようとしていた。
そして次の瞬間―――“ぬっ”とその“影”の中から一本の腕が??
* * * * * * * * * *
溜まらず出てきたか―――けどそりゃ、“遅い”ってもんだ。
こっちは十分準備させてもらったぜぇ……?
オレは“あいつ”の所有スキルを知っている―――
先ほど影から紛れて放った“何か”こそは、あいつの得物の一つである「苦無」だ。
そいつに自分の氣を乗せ、放つ―――と、あいつの氣が作用し、動けなくなる……それを≪影遁:影縫≫と言う。
そして今手前ぇの影から這い出てきたのは、同じく≪影遁:潜影≫―――
アレで今度はオレの影を刺し、優位に立つつもりなんだろう……が。
甘ぇ~よw もう既にバレバレだっつーのw
「ちょお~っと惜しかったなあ?w あのガキエルフ伴ってたから、少しはハンデになると見たのかあ? 残ぁ~ン念ぇ~ンでしたww」
影から這い出てきた腕を鷲掴みにし、一気に引き抜くと、そこから出てきたのは一人の獣人だった?
いや……それにしても全身が黒ずくめ―――それに見た感じでは、黒猫??
「くぅぅっ……は、離せっ! さっきから私のスキルをバラしてッ!!」
「ははッ、悪い―――悪い―――ちょっとした愛嬌ってヤツだぜw」
「くっ……くろねこの……じゅうじん?」
「おう、術が解けたか。 それに、なんだと? アハハハ!こいつは傑作じゃないか―――なあ? 『ノエル』?!」
「くぅおんのっ―――!笑うなっ! それに私は黒猫じゃない!黒豹だ!!」
「同じネコ科だし、ちっせえ以外はどこも変わらんじゃないかwww」
「ムッカぁ~~ッつくなあ! 『アベル』!!」
「あべる……?それがあなたのなまえ…………」
「あっ、この野郎……オレの名をバラすんじゃねえ!」
「フン、これでお相子ですよ―――今日こそあなたを葬り去ってあげます。」
「中々笑えるなあ~?ぁあ? 『加藤段蔵』さんよぉ―――」
「な……ッ!またッッ!! あなたにはねえ、ポリシーってものがないんですか!!?」
「はッ!そんなもんなんざ、とっくにあっち側に置いてきちまったぜ。」
中々だが、この2人の関係性がよく見えてこない―――
先ほど自分からは中々名乗らなかった彼の名前がようやく判った。
どうやら彼の名は『アベル』と言うらしい……そしてそのアベルの関係者だという黒猫……じゃない、黒豹の獣人の少女は『ノエル』とも言い、そしてまた『加藤段蔵』とも呼ばれていた。
一つの存在なのに、二つの名前を持つ―――?
そうした事も驚かされた事だったが、それはまだほんの序の口だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます