第2話 その名「シェラフィーヤ」?
怒っちゃってる……わよねえ―――この感じ。
でも……感じちゃったのよね、この“私”と“同じ”だって。
少し前、直感で感じていたことを口に出した―――
それもしつこく―――しつこく……
だから“彼”からの怒りを買い、怒鳴られた―――
そして私を見放すかのように、その場から去ろうとしていた……
冗談じゃない! 今ここであんたに去られたら、“今”の私ではっ―――!!
そう思い私は、私を置き去りにしようとしていた彼について行った……彼の行く当てなど知りもしないで―――
そして“トボトボ”とついて行ったその先で見たものとは―――
え?? “詰所”―――???
詰所とは……そう、言い換えるならどこの町にでもある、“役人”が詰めている所―――
「ん~? どうした、何か用か―――」
「あ~~実はですねえ……迷子のエルフを拾っちゃいまして……。」
「ほう―――迷子な。 それは感心なことだ。」
「そうでしょう、そうでしょう―――今この……お坊ちゃん?お嬢ちゃん?の行方を心配してる親御さんがいるに違いありません―――から、どうかおひとつ……よろしくお願いしまあ~す!」
―――ッッ……この男! よりによって私を迷子? 扱いにするなんて……中々機転が利くようね。
いや……でも、今は褒めている場合じゃないわ、今のこの状態が知れ渡りでもしたら、立ち処に………って、ヤバい―――ヤバい!!
「お……おとうさんっ!」
は? 何を言い出しやがんだこのガ・キ! あれほどオレはお前の『お父さんじゃない!』つってんだろうが!!
ああぁ……今そんな所じゃない―――この詰所のおっさんの目の色が変わっ………
「おい、ちょっと待て。 その子供……お前の事を『おとうさん』って言わなかったか?」
「ええっ? な、なんかの聞き間違いじゃないんですかね? ああそうだ、空耳だ―――空耳……」
「―――おとうさん……。」
むぅわだ言いやがるかあ~~このガキぃ~~~!!!
いくらオレが、声高にして主張しようが、いたいけな幼女の主張のほうが、どうやら説得力があるらしい。
いきなり苦境に立たされてしまったオレだが、どうにかこうにか上手くはぐらかし、今や自由の身――――――…………
じゃなくて、なんで「
「チッ―――貧乏くじもいいとこだぜ……。」
「……ねえ、ちょっとはなさない?」
「(はあ?)なんだお前―――普通に喋れんのか? 『おとうさん』としか言わないと思ってたぜ。」
「そんなわけ、ないじゃない。 とはいえ、こっちもいろいろ、じじょうというものがあってね……。」
「(……)取り敢えずは聞いてやる、だがそれだけだ。 大体オレとお前とは―――」
「わたしのなは、シェラフィーヤ。 あなたは?」
「(……)は?『シェラフィーヤ』?」
「そうよ、それがわたしのなまえよ。 あなたのおなまえは?」
『シェラフィーヤ』―――だ、と?
ちょっと待てよ……なんかどっかて聞いたことあるぞ―――
そうだ!アレだ!! オレがこうなるまでにプレイしていたオンライン・ゲームの、公式ボス・キャラの一人。
薄く淡い水色の長い髪が特徴的で―――その身には煌めかんばかりの装飾品……そして、誰もが羨むダイナマイツ・スペッシャルルリィティ・バディ!
その設定「魔王」じゃなけりゃ「女神様」と言われても十分納得できる美貌の持ち主があ? 目の前にいる“ちんちくりん”と同じ名前だとお?!
「……ねえ、ちょっと、きいてる―――? わたし、あなたのなまえしりたいんだけど……」
ふっっざけんなよ?! 確かにシェラフィーヤ様は、その一部で神格化されても所詮は魔王だ―――そのお住まいは城であって、こんな雑踏犇めく
「ねえ! ちょっと! いいかげんにしなさいよ!!」
「いい加減にするのは手前ぇだ、コラ! お前みたいな“ちんちくりん”が、あの、シェラフィーヤ様を騙って言い訳がない!!」
「(…………)おい、ゆめみがちなのはひていしないけどさ、わたしのなまえにケチつけるなッて~の!」
「ケチだと? お前には到底判らんだろうけどな、オレが(公式HPで)見たシェラフィーヤ様は、魔王設定のくせに女神様と言われても納得できる神々しさをお持ちの方なんだ!」
えっ…………なに、こいつ―――
何言ってるのか理解不能なんだけど……ひょっとしてヤヴァイヤツ??
しかも、今日が初対面なのに、私の姿を見た―――ってえ???
しかもさ、魔王なのに女神―――って、破綻してない?
う゛~~~とは言え……直感で感じたのは間違いないのよねえ―――
気に食わないのはお互い様だけど……ここは我慢よ、我慢―――取り敢えずは私の本懐を遂げるために……
「わかった、わかりました。 とりあえずはあなたのいうとおりでいいから―――それより、あなたのなまえは?」
「は? なんでそんなもん、お前に教えなきゃなんねえんだ。」
こ・の・男っ!!
こっちが
今すぐ魔法ぶち込みたいけど、“今”の私の状態じゃあなあ~~~……
「~~~わ・わ・わ・わかったわ、お、おしえてくれなくてもいいから、ち、ちょっとわたしに、きょ、きょうりょくしてもらえないものかしらあ?」
「は? だからなんで赤の他人のお前に、こ・の・オレが協力しなくちゃならねえんだ、ぞ、と!」
ムッキィイッ! 腹立つ―――! この私にここまで無礼な態度を働くなんてッ!
死刑よ―――死刑! こんなヤツ、事の次第が収まったら、今回の一件の首謀者の次に「断頭台」送りよッ!!
「話は終わったかあ~? おチビさんよお―――見ず知らずのこのオレを、手前ぇのオヤジに仕立て上げたまでは良かったんだが、世の中そんなに甘かぁないってことだ。 ま、孤児には孤児なりの生きてく道―――ってのがあんだろ……じゃあな。」
「―――まって! はなすから……すべてのわたしのじじょう、はなすから、だからまって!」
思わず私は、
それは、今私が置かれている状況―――そして差し迫りつつある危険がそうさせたのだろう……。
いま私は、ここで終焉を迎えるつもりははない―――これが“神”が用意した試練だったとはしても、
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