「魔王プレイ」をしたことがあったからか、“おとうさん”と呼ばれて幼女魔王を保護しています。

天宮丹生都

第1話 “オレ”と“幼女エルフ”

“オレ”―――は、割とどこにでもいる高校生。

“普通”で“一般”で何の取り柄もなく、「いつも」の様に学校へ通い、「いつも」のように友達ダチとバカな話をしてふざけ合っている、普通の高校生だ。


あ、いや、訂正しよう。

『何の取り柄もなく』と言うのは間違いだ。

オレの唯一の“取り柄”―――それは、「ゲーム」だ。

それも「オンライン・ゲーム」………


この現実世界に数多あまたあるオンライン・ゲームの中で、得意としているジャンルがある。

それは「MMORPG」―――いわゆる「異世界モノ」と言うヤツで、勇者だとか魔王だとかが登場するアレだ。


そんなジャンルの一つのゲームの中では、オレは得意顔でいられた。

まあ自分で自慢するのも何だが―――「俺TUEEE」とかいうヤツだ。


それはそれとして話を戻そう―――

何故この冒頭からモノローグが続いているのか……

それはまあその―――あれだ……

確かオレは、得意としているゲームの最新アップ・デートをしている最中に、なぜか猛烈な眠気に襲われ……

気が付いてみれば――――――………


なんじゃこりゃああ!!!

えええ―――? マジでえ? 何がどうなってんの? コレ!!


気が付いてみるとそこは―――いつも見ている高層ビルや、せ返る様な排気ガスをまき散らかす自動車………更には、肩をぶつけ合っても何も言わない雑踏ざっとう………などではなく?

一昔前の世紀に戻ったかとすら錯覚させられる、石や木材を主体にした建物に? 町の道を歩いてるのは―――胴短短足で顔はヒゲモジャ面の「ドワーフ」に、頭には様々な獣耳、尻には尻尾と言う「獣人」??


何がどうしてこうなったあああ―――!?


いやまて……オレ、こういう時こそ冷静に………そう、冷静になって思い出すんだああ!


              ―――30分後―――


ダメだ………分かっちゃいたけど、ダメだった………。

いやしかし、現実離れしてるよなあ………。

そいや、よく視聴みてたアニメとかでも、大体こんな感じだったよなあ………ハ・ハ・ハ―――


『ハ・ハ・ハ』じゃねえ―――! 現実を見つめ直せ、オ・レ!!


……とは言ったモノの―――非現実的な日常を受け入れられるほど、オレの精神は“頑丈タフ”じゃないのだ……。


           * * * * * * * *


それから少しばかり冷静になり、オレはある考えに至った―――


あ、そか、これゲームなんだ。

だったら「メニュー」から「ログ・アウト」を選択すりゃ……


選択………すりゃ………………


「メニュー」が収まってる「コンソール」が、そもそもなかったあああ―――!

いやもう、何でこうなったあ?!

もう……これはアレか? 諦めるしかないのか??

いやだがしかし、我が人生の師匠はこう言っていたではないか―――


『諦めが人を殺す、諦めるのを止めた時、人は人道を踏破する権利を与えられるのだ!』


そうだ! その通りだ! ここで諦めちゃそこで試合終了だ!!


先生せんせぇ~オレ……ゲームがしたいです―――


{*色々と混乱渦巻く中、色々な作品の色々な場面シーンが彼の脳裏を走馬灯のように駆け巡っているようである。}


            * * * * * * * *


それから更に1時間後―――オレはようやく普段のオレを取り戻し、どうにか冷静にいられるようになった。


う~~ん……まあ確かに、この街並みや建物―――更にはこの町に住んでる住人達は、何から何までオレがプレイをしていたあのゲームそっくりだ。

これもまあ、よく視聴みてたアニメの設定宜しく……なんだが―――

だとすると―――だ、“ゲームの世界こっち”に来てるのって、オレだけなのか? もしかしたら―――このゲームでフレしてたヤツらもいるかも知れないな!? よぉ~し、だったら早速「ダイレクト・コール」を!!


そもそも“そう言う”のありませんでした―――


しまったあああ! 何という初歩的ミス! 冷静に立ち直ったんじゃなかったのかよ、オ・レ!!


オレは悔いた―――さすがに一頻りひとしきり悔いた。

そりゃ、周りから見たらいい年した男が、独りで身悶えているのだ。

恥ずかしい~~ったらありゃしない――――――と、そう思っていたら……


ふと、オレの服の裾を“チョイチョイ”と引っ張るヤツがいた―――


「あ゛!? 何だこの野郎―――今オレに気安く話しかけんじゃねえ!」

「(ひっ!)あ…………」


オレの服の裾を引っ張るヤツに、優しく注意したら少しドスを効かせてメンチきったら———それはまだ年端もいかぬくらいの“幼女”だった。

しかもその幼女は、“パッ”と見た目で分かるくらいの特徴―――“長耳”……そう、「エルフ」だ。

しかし……なんだ? この世界にきて間もないオレに、エルフの幼女なんて身に覚えのない話しなんだが……


「あの~~~お嬢ちゃん? 今お兄ちゃんな、お取込み中なの―――分かる?」(ニコヤカ~ひきつった笑顔

「……おとうさん。」


は??

なんだ―――このガキ、言うに事欠いてオ、オレの事を「おとうさん」だとう~~??


「いやいや、一体何を言い出したりするんだい―――お嬢ちゃん?」(ニコヤカ~無理のある笑顔

「おとうさん……おとうさん!」


「よぅしよく分かった、一旦こっちへこようかあ?」


穏やかな昼下がりが少々ザワめき始めた―――

オレにしてみれば全く見ず知らずのガキエル……ああいや幼女エルフが、なぜか節操もなくオレのことを「おとうさん」呼ばわりするものだから、町行く人々のつべたくも痛い視線に晒されてしまっているのだ。

オレだって精神力や耐久性には自信があったが、全く見ず知らずの土地に、人間ではない種族の連中からの視線攻撃には慣れてはいない―――と、いうわけで、少々不本意ながらも、こうして人通りのいないうらぶれた路地に移動したわけだが……。


「あのなあ……オレの事なんだって? 「おとうさん」? 冗談も大概にしようじゃないか、お嬢ちゃん。」

「おとうさん…………」


「オレは、お前のお父さんなんかじゃねええ~~! 分かってんのか、ガキ!! 大体種族的にも違うだろう? オレにはお前みたいな“長耳”、付いてないだろうが?」


少しキツく言い過ぎたか? 下向いて喋んなくなっちまいやがった―――……

けれど「ハイ、そうです」て言おうもんなら“認知”してことになるしなあ~……

うぉぉっ―――今背筋が“ブルっ”てなっちまったが……まさか“あいつ”もこっちに来てるんじゃないよなあ? だったら、その前にこうした誤解を解いておかないと―――


自分が怒られたものと思い込み、そこからは終始無言となった幼女エルフに一瞥をくれ、その彼はその場から立ち去ろうとしていました。

すると―――諦めていなかったのか、その幼女エルフは彼の後を“トコトコ”とついて行った―――

“それ”が、彼がくわだてた腹案であるとも知らずに―――……。


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