第151話 幕間4 悪しきもの達の号令
魔獄城玉座の間にて
「魔軍司令ヘルド⋯⋯おるか」
重厚な、そして威厳のある声が部屋に響き渡る。
しかしそれは声だけで、姿形をどこにも見当たらない。
「はっ! ここに!」
浅黒い肌で、鋭い目付きをしており、その威圧感からかつての魔王と言われる者が現れる。
「魔導軍団団長ボルデラ」
「はっ⋯⋯ここにおります」
老人の姿をしているが、溢れ出ている魔力からただ者ではないことを伺わせてる。
「魔獣軍団団長ザイド」
「⋯⋯ここにおります」
2メートルを越す巨体で、存在しているだけで周りはプレッシャーを受け、弱きものはその場に立つことすら許さない。
「魔竜軍団団長ゼファー」
「ここにいるぜ」
ドラゴンの姿を形どった人型の姿で、魔物の最強種である竜族を従える強者である。
「死霊軍団団長シドー」
「⋯⋯」
闇の法衣に包まれ、謎の空気を作り出す者が突如現れる。
「貴様大魔王の御前だぞ! 返事をしないとは何事だ!」
魔軍司令のヘルドがシドーに対して叱責するが、シドーは何も答えない。
「よい」
「しかし大魔王様!」
「私がよいと言っておる」
「ッ! は、はっ!」
大魔王は殺気染みた威圧を放つと元魔王のヘルドでさえ、恐れのあまり従うという選択以外を選ぶことができなかった。
「こうして集まってもらったのも他ではない⋯⋯これより世界を我が手中に収めるため、人族や亜人共の国へ侵略する!」
「おお! 遂にこの時が!」
魔王として君臨していた頃からの悲願を耳にし、ヘルドは喜びに打ち震える。
ザイドを除いた他の団長達も不敵な笑みを浮かべ、高揚感が沸き、誰もがその役目を自分にと願っていた。
「ボルデラ⋯⋯そなたは今攻めているルーンフォレストをそのまま担当しろ」
「承知しました」
ボルデラがルーンフォレストだと! なぜ2度失敗した奴が変わらず行うのだ。
しかしヘルドに、いやこの場にいるものに取って大魔王の言葉は絶対なので逆らうことはできない。
「ゼファー⋯⋯お前はアルスバン帝国を」
「了解しました! 私にお任せを!」
ゼファーは意気揚々と答え、どうやって敵を殺そうかとうずうずし始めている。
「シドー⋯⋯貴様にはメルビア王国方面を任せる」
「⋯⋯」
シドーは静かに頷く。
「ヘルド」
「はっ!」
「貴様は謹慎中の身⋯⋯魔獄城を護れ」
「しょ、承知しました」
ヘルドは以前ヒイロに負けたこともあり、渋々大魔王の意見に従う。
「人ごときに負けた奴に国取りは任せられねえってよ!」
「何だと貴様!」
ゼファーが思ったことをそのまま口にすると、ヘルドは左手に魔力を集め出し、それを放とうする。
「御二人とも、大魔王様の御前ですぞ⋯⋯軽率な行為は慎んだらどうじゃ」
ボルデラに言われ、今ここが1番死に近い空間だと思い出し、2人は慌てて跪く。
「ふはは⋯⋯よいぞ、ワシは強者が好きだからな。それに争い、闘争こそ魔族の本懐。止めるようなことはせぬ」
しかしそう言われたからといって、再び争いをするほど2人はバカではない。いつ大魔王の気が変わり、死が訪れるかわからないからだ。
「そしてザイド⋯⋯」
「⋯⋯はっ」
ザイドは前回のルーンフォレスト襲撃の際に戦場を離れている。
その為、どんな罰則が来るか⋯⋯ここで殺されることも覚悟していた。
「そう怖い顔をするな⋯⋯詳細はボルデラから聞いている」
そして大魔王の殺気が徐々に膨れ上がってくる。
「⋯⋯申し訳ありませぬ」
「だがワシは、貴様のその人間くさい武人とかいう行為も、嫌いではない⋯⋯今回の件は不問と致す」
そして大魔王の殺気は無くなる。だがザイドに取っては次はないと思えと警告を受けたように感じ、頭を上げ、恐ろしさのあまり大魔王を見ることができない。
「さあ、我ら魔族が世界の覇権を握る時がきた! この世は弱肉強食! 弱いものは淘汰され、強きものが生き残る時代! 強きものとは魔族! そして弱きものは人や亜人! さあ行け! 我が精鋭達よ! 全てを滅ぼして戦果をワシの前に持ってくるがよい」
「「「「「はっ!」」」」」
こうして魔獄城では大魔王の号令により、本格的に各国への侵略を進め、この世界を混乱に巻き込む大規模な戦いが始まるのであった。
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