第131話 ヒイロVSギガントフォース

 グアァァッ!


 改めて近くで見るとデカいな。

 身長は俺の2倍強あり、腕や足の太さは少なくとも10倍以上はある。もしあの手足で攻撃されたら、一溜まりもないだろう。


 俺は魔法を使って奴の能力を確認する。


「【鑑定魔法ライブラ】」


 名前:ギガントフォース

 性別:男

 種族:巨人族

 レベル:35

 HP:7,210

 MP:32

 力:A-

 魔力:F

 素早さ:C

 知性:F

  運:E


 やはり見た目通り力があるみたいだ。まともに受けるのは得策ではないな。


「な、なぜこのような所に、こんな魔物がいるのだ」


 さすがのディレイト王も、目の前にいる巨大なギガントフォースに恐れをなしている。


「おそらく王やティアを殺すために放たれた刺客かと」

「それで魔物を差し向けてきたというのか! いったいどうやって!」


 ドンッ! ドンッ!


 ギガントフォースは結界に向けて拳で殴りかかってきた。

 正直俺の結界が破られることはないが、そのことを知らないディレイト王とティアは、いつこの光の壁が破られるか、恐怖でしかないだろう。


「くっ! ティア! ヒイロくん! ここは私に任せて2人は逃げるんだ!」

「危険ですお父様!」


 ディレイト王は剣を抜き、ギガントフォースに立ち向かって行く。


「うおぉぉぉっ!」


 無茶だ! もし攻撃をまともに食らったら、一撃で死んでしまうぞ。


 ギガントフォースを結界が破れないと悟ったのか、それともディレイト王

 の存在に気づいたのか一度後方へと下がる。


 これで結界の中から、剣で攻撃することは出来なくなったので、一度外に出るしかない。


「くらえっ!」


 ディレイト王はギガントフォースの前で飛び上がり、上段で頭を斬りつける。


「もらったぁ!」


 タイミング的には攻撃が当たってもおかしくなかったが、ギガントフォースの右腕が、頭に剣を食らう前に、ディレイト王の腹をなぎ払った。


「ぐふっ!」


 剣が当たると思っていたディレイト王は、ギガントフォースの攻撃をモロに食らい、馬車まで吹き飛ばされる。


「ごふっ⋯⋯く⋯⋯くそ!」

「お父様!」

「ディレイト王!」


 なんとか意識はあるようだが、両腕は折れ、口からは大量の血を流し、もはや剣も握れず、闘える状態じゃない。


「ティアを⋯⋯ヒイロ⋯⋯くん⋯⋯を⋯⋯私が⋯⋯護るんだ」

「ディレイト王⋯⋯」


 俺のことをティアに近づく悪い虫として、嫌ってるかと思っていた。

 窮地の時こそ人の本性がわかる。この人の俺を護ろうとする気持ちは本物だ。


「後は俺に任せて下さい」

「ば、ばかを⋯⋯言うな⋯⋯ヒイロくんに⋯⋯何かあったら⋯⋯リョウトとユイ⋯⋯に顔向け⋯⋯できん」


 それこそディレイト王に何かあったら、父さんと母さんに顔向けできないよ。


「お兄ちゃん⋯⋯お父様を⋯⋯助けて」


 ティアが涙を流しながら、ディレイト王助けてほしいと懇願してくる。


「任せろ」


 俺はディレイト王に向かって魔法をかける。


「【睡眠魔法スリーピング】」


「な、何を⋯⋯」


 ディレイト王は、その場で静かな寝息を立てて眠った。

 この結界は俺が作った結界だから、俺の魔法は効果がある。


「少なくともこの結界の中にいれば、傷も回復するし、魔物に攻撃されることはないから安心しろ」

「ありがとう⋯⋯ありがとうお兄ちゃん」

「後はあいつを倒すだけだ。ティア⋯⋯ディレイト王を頼む」


 俺は異空間収納から翼の剣を取り出す。


「気をつけてね」

「ああ」


 俺はギガントフォースと向かい合う。

 サーベルジェネラルのように、横に長いのも威圧感があるが、縦に大きいのはまた一段と⋯⋯。


 だが所詮はレベル35。

 油断しなければ負けるはずがない。


 グアァァッ!


 ギガントフォースは俺を威嚇しているのか、咆哮上げ、一つ目でこちらをジロリと見てくる。


 これは不味いな。

 咆哮の音が大きすぎて、頭が痛い。

 手で耳を押さえればいいが、そうすると剣は持てないし、隙だらけになってしまう。

 これは早々に決着をつけた方が良さそうだ。


 ティアも辛そうだしな。


 グアァァッ!


 ギガントフォースに向かって走り出そうとするが、また咆哮を繰り出してきて俺は動きを止めてしまう。


「くそっ! こいつ狙ってやってるのか」


 いや、こいつにそんな知能はない。

 鑑定が使えなかったらわからなかったが、こいつの知性はF⋯⋯本能で吠えているだけだ。


 バキッ!


 俺が動けない間に、ギガントフォースは大木を折り、その大木を手に取り始めた。


 おいおい! まさかそんなぶっとい丸太のような木を、振り回して来るんじゃないだろうな。


 ブオンッ!


 ギガントフォースがその木を手に素振りをすると、軽く吹き飛ばされそうな 風圧が俺の所まで飛んで来る。


 どうせなら夏の暑い時にでもやってくれ。

 俺は速攻で方をつけるため、改めてギガントフォースに駆け寄ると、持っている木で横になぎ払ってきた。


 ブオンッ!


「お兄ちゃん!」


 風圧ごと木が飛んで来るが、俺はジャンプ一番でかわし、ギガントフォースの頭を狙ってそのまま剣を振り下ろして地面に着地する。


 ギガントフォースは動かない⋯⋯いや動けない。


「ど、どうなったの?」


 ティアの声が合図だったかのように、ギガントフォースの体は真っ二つに割れ、声を上げる暇もなくそのまま崩れ落ちる。


「す、すごいです! お兄ちゃんはやっぱりすごいよ!」


 ティアはギガントフォースが倒れた姿を見て、子供のようにはしゃぐ。


 もっと咆哮を中心に攻めてくれば、もう少しは生き延びられたのにな。

 だが絶命したギガントフォースに言ってもしょうがないか。


 ん?


 死体となったギガントフォースを見ると、左の腰の所に、布で包まれた何か身をにつけているぞ。

 俺は近くによって確認すると、それは円形のお香立てで、その容器からは、ここら一体に充満している甘い匂いがした。


「お兄ちゃんそれは?」

「どうやらこれが原因でみんな寝てしまったようだ」


「【火炎球魔法ファイヤーボール】」


 俺はギガントフォースの死体ごとお香立てを燃やす。

 これで睡眠作用はなくなるはずだ。


「これで⋯⋯終わりでしょうか」

「ああ⋯⋯後はみんなの目が覚めるのを待つだけだ」


 だがディレイト王やティアの暗殺⋯⋯かなりきな臭いことになってきたぞ。前回は騎士に盗賊、そして今回は魔物⋯⋯魔物に命令できる奴は誰だ? それは魔族しかいないだろ。ティア達を殺したがっている奴は魔族と通じているかもしれないから、今後も注意が必要だ。

 そして犯人を見つけないと永久に狙われるかもしれないな。


 ザザッ


「誰だ!」


 森の中からゆっくりと何かが近づいてくる。

 まだ仲間がいたのか。

 ギガントフォースの咆哮に気を取られて、周囲の索敵が疎かになってしまった。

 俺は武器を片手に、注意を払っていると、相手は突然地面に倒れてしまった。


 どういうことだ?

 俺は警戒しながら倒れた相手の元へと向かう。


「お、おまえは⁉️」

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