第3話 真相
翌日。
雨が降り続けている俺の心などお構いなしに、空は憎らしいほど晴れ渡っていた。
彼女に引きずられながらやって来た場所はテレビで紹介されたこともある人気のドッグランだった。
今日は休日ということもあり、人や犬で混雑している。
なぜ、こんなところへ俺を連れてきたのだろうか。訝しく思っていると、
「深雪、遅れてごめんね」
手を振ってにこやかに現れたのは細身の女性だった。
「あたしもちょうど今着いたところよ」
深雪も手を振って応じる。
そして、女性と並ぶように軽やかな足取りでやって来たのがあの匂いの男だった。
赤茶色のくせ毛と可愛らしい容姿で女性を虜にし、犬の人気ランキングで毎度一位に君臨する、憎き
「武蔵クン、今日も可愛いね」
深雪が黄色い声を上げて、トイプードルを抱き上げる。
「この間、深雪に教えてもらったお手とお座りはちゃんとできるようになったんだよ」
「偉いねー」
「なんせ、犬を飼うのが初めてで分からないことだらけだったから、深雪からいろいろ教えてもらえて助かっちゃった」
「あたしも小次郎が小さかった頃は手を焼いたもん。みんな初めてのときは分からないことばかりだよ。なんでも聞いて」
「君が噂の小次郎クンね。深雪から話は聞いているわ。今日は武蔵のドッグランデビューだから仲良くしてあげてね」
女性は敬意を払って俺の頭を撫でてくれたが、そんな風に気遣ってもらう必要はなかった。
俺は黒い鼻から尻尾の先まで嫉妬心に乗っ取られた怪物になってしまったのだから。
「ワンワンワンワンワンワンワンワン!!!!!」
ドーパミンがなんだ。脳科学者の予言がなんだ。深雪に近づくな。深雪は俺の彼女なんだ。お前になんかに渡すもんか。
俺の愛する彼女の腕の中、天使のような顔で甘えるトイプードルが心底憎い。
頭の中に住み着いた脳科学者が逃げていくまで俺は吠え続けた。
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