第46話 破局1
「……どうして清暖がここに?」
空き教室に足を踏み入れた青空の第一声はそれだった。
彼女が送る視線の先では抽冬が吹けば簡単に散りそうな
「ちょっと、ね。もしかして、その状態でここまできたの?」
抽冬は腕を組む俺と青空を見て驚くように言った。
張りつめた空気を少しでも和らげようとしてくれたのか、はたまた単なる皮肉か、どちらかはわからない。確かなのは、前者を望んでしまうのは俺の勝手な都合で、俺の弱い部分ということだけ。
「はぐらかさないで。もう一度聞くけど、どうして清暖がここにいるの?」
「僕がいたらダメなのかな?」
「質問の答えになってない」
「答えなきゃダメかな?」
「茶化さないで」
もはや苛立ちを隠そうともしないその声は、普段の穏和な彼女からは想像がつかないほど冷たいものだった。
「華美」
抽冬に名前を呼ばれたのを俺は合図と受け取り、頷き返す。
「青空、ちょっと窮屈だから離れてくれないか?」
「嫌です」
離さないようにと青空は自分の身体を押しつけてくる。
なにも知らなかった前の俺なら興奮してまともに思考できなかったかもしれないが、今の俺は違う。
「離れてくれ」
「…………」
再度要求すると、青空はすんなり従ってくれた。
無言で後ろに下がり俺から距離をとった青空。その瞳は既に偽ることをやめているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます