第43話 雨降る日にはカフェでホットを3

 抽冬清暖


 疑問を覚えなかった華美が僕にとっての純粋な疑問だった。だからぶつけた。



「…………」



 それは、普段のイメージとはかなりかけ離れた表情だった。向かいに座っているのは確かに華美のはず、だというのに雰囲気がまるで別人。



「……もしかして君は――」



 言いかけたところで華美に手で制される。



「――違うから」



 冷めた声音で短く返してきた華美はアイスコーヒー片手に立ち上がる。これ以上は踏み込ませない、そう態度から伝わってくる。



「青空とはすぐにでも別れることを約束する」

「え、あ、うん……あのさ、僕もその場に立ち会ってもいいかな?」

「……そうだな、俺が口で説明するよりも本人がいた方が手っ取り早い。頼んだ」

「ありがとう、華美」

「ああ……じゃあな」

「うん」



 店を出ていく華美の後ろ姿は、どこか自信なさそうで頼りなさそうで、自分が大好きな人が見せる背中ではなかった。


 雨の日はさすがの君でも気分が滅入るのかな? それとも――本来の君を見せてくれただけなのかな?

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