Cookie Cherry

しら玉白二

第1話

ひとりでいることが

楽しいなんて

誰が教えてくれるんだろう

狭く広い宇宙の中で

飛んで浮かんで

回って疲れて

泣いて眠って

叫んで疲れて

こみ上げて目をつぶって

静かになって眠りふけって

苦しくなって

潰れてしまって粉々になって

またどこかで小さな星に生まれて

月が隠れても1人ぼんやり光輝いて

死んでしまっても

何百年もその光は届けられ

途絶えることがない

宇宙の中はこんなに静かで忙しいのに

黒い闇の中に

一人ぼっちでいると思っている人は

思いつきもしないことなのだ


あれから。

雨が降るのを待つのも疲れた

何をするのも

音にかき消されて欲しかったのに

しとしとしとしと

アスファルトが黒く光って

車が外でシャーシャー走っていれば

それで気が済むのに

春が訪れる夜の肌寒い道

何となーくだるい気分を地面に引きながら

なんとなく楽しんでいる自分に

なんとなく暗くなりながら

帰っていく繰り返し

でも一年前と違うのは

自分の中に彼女がいることだった


4711。

カノンが

ホテル前のタクシーに乗り込む

行き先を告げて

ブレスケア、タブレット、粒ガム

口に放る

部屋に戻ってシャワーに入る

髪がカラカラになるまで乾かし

オレンジの香りを苦くなる迄からだにかける

ベッドに潜る

いつだっけと思った時点で忘れてるのは

覚えてなくても困らない程

必要ない出来事だから

昨日だっけ2日前3日前?いやーいつだっけ

強く考えないと思い出せない

一度寝るとさっきの事がいつの事だったか

毎回面倒くさくなる

起きたらバイト

自分の中の自分勝手どうでもいい


smell。

建倉はカノンを

初めて見た時きれいな男だと思った


連れてこられたカフェの

カウンターで働いていた

僕のことを好きな女友達が

横で話しかけている

声があまり聞けない「え」とか「そんなことないですよ」とか「またまたー」と

目で返しながら仕事してる

客が気分良くいられそうな柔らかい物腰

巻き毛で口元がきゅっと上がる

色が白くモデルでもしてそうだが

それから何か

なんかすごくソフトな指使いをする子だな

僕のクセだ

友達(飾り)を探そうとする

向こうにつまらない男だと思われてても

僕はそれを上回って

つまらないと相手を見てるから

見た目と中身がそこそこなら

適当でちょうどいいんだ


カノンと潤ちゃんが早上がりの日

店を出たところで

階段を上ってきた建倉達に

飲みに誘われた

向こうは男女3人

店の常連になり始めていた


上からフロアを見下ろす。

カノンちょっと化粧室

潤ちゃんが席を抜けた

3人長いの?ずっと?

建倉がカノンを見る

三角関係

勘のいいカノンが尋ねる

女友達にそんな様な事言われた事はある

付き合ってやればって?

まぁ

楽しんでんだ

まぁいいじゃない上手く行ってるんだから

邪魔されんの?女出来たら

させないよ

一瞬周りの音が消える様な冷たい言い方

付き合えば嫌な目に合いそうだ

メンバーは変わるが何回かそんなことがあり建倉と潤ちゃんが付き合いだしてた


一服☕️

店長とバイトトップの高木が話してる

店長、どうして潤とったんですか

女?

はい

かわいいじゃん明るくて

最近続かねぇし

ええ

女の子入ったらどんなかなーと思って

ええ、雰囲気いいですね

なあ

ホールにブス嫌なんだ俺

カノンもかわいいし、今回結構良かったですよね

まぁ、潤辞めたら又戻す

えー男だけに?

バイトなんてさ、太く短くか細く短くかだろ

えー店長ぉ

長くなんか続かねぇよ

チクショウ悔しいなぁ

お前みたいなさ、5年やって辞めたとしても

思い返すと短いんだよな

もっと教え込んでやりたいと思っても

みんな辞めちゃうのさ

そうなんですか

でも今のスタッフはいいよ

はい

動くもんな

はい

嫌じゃねーもん

うちの店雰囲気いいですよ

なあ

みんな店長慕ってますから

嬉しいね

はい


6月の寄り道。

ビール買って行こ

カノンの手を取ってベンチから立ち上がる

潤ちゃん

引っ張るカノンに振り返る

浮気相手やだな

話し相手

えー

何処も嫌なんだもん

潤ちゃんの顔を見たまましばらく考えている様子のカノン

腹減ったね

だから何か買って行こう

片手を出すカノン引っ張れと催促する

…話し相手するかな

カノン年上に優しくするの得意なんでしょ

荒れてんな

笑わないで

買い出し先まで話は途切れないが2人の間に少しの緊張と気遣いが漂っている

小谷さんさ、おにぎりとビールさ

何?

おいしくないよねアレ

おにぎりとビールの組み合わせ?

いつも食べてるでしょ

ふふ着替えたらカウンター座って

必ず出すもんね、おにぎり

喉渇いてビール腹減っておにぎり

いつもね2つ。サッカーあるときは

パンも混ざってるのよ

そうだそうだ

「食事でもう少し盛ってもらえないん

ですか」って聞いたけど

「それでも減るのよ潤〜」って言ってた

別腹なんだ

ねー

店のドアを開けて潤ちゃんを入れるカノン

ビールを選びながら話が続く

潤ちゃんと同じでいいよ

じゃあこれ

やっぱり話し相手できないよ

カノンを見る

ホテル行ったらガッついちゃいそう

潤ちゃんをチラッと見て

まだ飲みたそうなビールを探すカノン

目を細める潤ちゃん

…おにぎりとサンドイッチあっちよ

口をすぼめて目を細めるカノンそっちを見る

食い物は別のとこで買おうか

え先に買う?ぬるくなっちゃうね

待ってガム買う

話しながらレジに向かう2人


2人だけなら。

どうしたの

潤ちゃんの背中に手を伸ばす

…やけど痛いの

何処で

カーペットに擦れてだと思う

床好きなのアイツ

パパと3人で食事したの

「嬉しいよありがとう」ってなんか

床で?

我慢したの痛かったけど

つけてやれば同じ跡

自分勝手にしかしないから

げーって顔で舌を出すカノン

途中で機嫌悪くなるの分かる時ある

……

潤ちゃんをゆるく抱き寄せる

潤ちゃん、そういう時は

普通そこで離れるんだよ

カノンは優しそう

潤ちゃんが見上げる

カノンとだったら

どっちが女の子か分からなくなるかも

どうしてさ

見下ろすと顎にシワが寄ってしまう

女の子っぽいところある

ないよじゃあ潤ちゃん男の子っぽい

ないよ〜

泣かないでよ好きだよと

笑って胸にうずめさせると

潤ちゃんも笑い出した

泣いてないよカノン私も好き

潤ちゃんからキスしてくる

下がるカノン

ねぇ見て

見てるフフ

潤ちゃん好きだよ

建倉に1番言ってもらいたかった事

涙が溢れる

カノンは年上が上手

僕は潤ちゃんが上手

ははっ

潤ちゃんが目をつむり出す

眠たいの?

そうね疲れた

寝てないの?

返事をしない寝始めたか

潤ちゃんにキスする

潤ちゃんもキスしてくる

カノンと寝ながらエッチ

唇を離さない2人笑い合ってる

何言ってるか分からないよ

唇がブルブルしてる


A start。

潤ちゃんが店を辞めた

モデル仲間の子2人をカウンターで店長が相手している

建倉さん来てるんですか?

あぁそうね

1人で?

いや、男性とが多いか1人ではないよ

そうですか

あれ結婚は?

ここ辞めて3ヶ月しないで別れてる

潤?

ランチが終わり食事に入るみんなにも

聞こえていた

皿に凄い量を盛るカノン

私最初から建倉さんカノンだと思ってた

ん?

なんで

勘。次カノンに行くんじゃない

カン?

カンだって店長

んー


カジはカノンのひとつ下

後から入ってきたカノンに可愛いがられて

いた

潤ちゃんが公園のベンチでカノンの手を

引っ張っていたのをバイト帰りに見つけ

なんとなく2人の関係に気づいてた

カノンは怒ると凄くしつこくてねちっこい

止めないと手がつけられない位仕返しする

たたずまいが柔らかくて嫌いって言わなくてでも触らせなくて

男も女も

会えばカノンを好きになるからなおさら

なんかそういう人が怒ったら手付けられないって余計面倒くさい

男ばっかりの店だから潤が辞めれば

また最年少のカジがいじられる


微妙に噛み合わせない。

(高木さんはなんか、ちょっと冷たい

小谷さんはなんか調子いい)

食事を終えて仕事に戻るカジ

カノン怒ってる

怒ってる?怒ってんのカノン

ひと足早くカウンターで動いてる高木

ええ俺分かるすっごい無駄に量食うの

そうなんだ

(ほら)

知らないけど、ああいうのありますね

ばっくんばっくん食べてんでしょ

見て目が笑ってない

意外と分かりやすいじゃん

何なしたの?

小谷さんが首を突っ込んでくる

カノン今日すんげぇ食ってるさ

カノン?元気でいいじゃん

なあいいよな

(舌打ち)

なんで怒ってるのかな

なしたの何怒ってんの?

小谷さん、もうメシ行ったんですか

今終わった

じゃ俺行って来ます

いい?これ3番

え?あ、オス


君の横を歩く。

潤ちゃんは深く傷ついている

僕の部屋で泣いている

君の横を歩く

彼女はまだ立ち直れない

僕の部屋でまだまだ傷ついている

傷心の彼女を映画に誘った

心はどこに漂っているのやら

君の横顔をみる

君の横に座る

そうだねぇって言いながら

話は聞いてない

いいんだ

僕に話してないんだから

あっちのカフェに入ったり

こっちの店に付き合ったり

運転したり

映画を見たり

展望台まで上がったり

家にあげちゃったり

行く先々でいろんなものを食べてはしゃいで

落ち込んで泣いて

僕を目の前に置いてしゃべるしゃべる

君の少し前を歩く

時々彼女が怒ってる?と聞いてくる

いや腹減ったなぁと思って、と答える

僕離れしてくれよな

頼むぜベイビー

なんかいいじゃん

つぶやいたぜベイべー



透ける。

「違うの?」

カノンが唇を離して僕を見上げる


ボクトノキスナンデショ


「違うの?」

静かにまっすぐ聞いてくる


ボクトナンデショ


そうじゃない

「違う」

頬を持ち上げて強くキスした

気持ちが追いつかない位

重い扉から解放される

ずっと押し続けていたんだ

体が浮くように

この僕を君は剥がしていく

どこまで行けばいいかわからない位

もうそれはたまらなく

それが君の待っている事でも

今はいいんだ


準備中(5人で噂話し)。

いた

たてくら

何処に

ギャッツ

いつよ

はーマジか

昨日

え、何どこの店?どこにあんの?

あれ何処だ井沢ビルか

井沢ビル?え、何の店?

なんで居んのよあいつ

どっか行けよな

マジかギャッツ

1人か

カウンター1人

出てけないのかね

後からキてんな

カノンは?

「来月おいでよ」とか言ってましたけど

来月行けませんから外国まで

店長、社員旅行行きましょうよ

おう、出してみんなの分

あれもコワイな

店長、撮っていいです?カノンに

いやコワイわ

何やってんの今向こうで

え、エプロン巻いてますよ店で

少し寄って下さい、いきますよ〜


it's a possibility。

デンマークオーフス

鼻までマフラーを巻き上げて

通りの先を見ているカノン

潤ちゃんは向こうから来るはず

店の外のテーブルは

こっちも向かいの店もたくさん学生で

賑わっている


来た


マフラーを鼻まで上げて

腕組みしながら歩いてくる

長い髪の毛先が風になびいている

潤ちゃんだ

カノンの口元が緩み椅子から立ち上がる

どうしたらいい気付くわけない

でも待てない

カノンが潤ちゃんに向かって叫ぶ

潤!

潤ちゃんが腕組みのまま顔を上げる

目を細めて見る

えっ?とまた細める

マフラーを口元まで下げ

嬉しそうにしてるカノンがいる

目と口で一緒に息する潤ちゃん


なんで潤ちゃんがデンマークなのか

俺わかんない

私はなんでカノンがここにいるか分からない

両手を小さく広げて首をすぼめる潤ちゃん

まだ目はびっくりしている

でも大きく息を吐き笑顔が出る

カノン!

へへっと照れて下を向くカノンにハグする

この道通るのどうしてわかったの?

大学通ってるなら大体ここ通るって

聞いたから

カノン、デンマーク語勉強したの?

それよりボーイフレンド出来た?

いないの

またハグしあう2人

カノンに会えるなんて…

目を閉じてカノンを抱きしめる潤ちゃん

俺…会いたかった俺…潤ちゃん好きだよ俺…好きって何回でも言えるんだ

潤ちゃんより強く抱きしめて絞り出すように話すカノン

カノン愛の告白してるの?

埋もれて窒息しそうなカノンの胸から

顔を出す

俺潤ちゃんには素直に言えるんだ

だから何回でも好きって言いたいんだ

だから愛のコクハク?

そうだよ愛の告白だよ潤が好きなんだ

潤ちゃんがしなる位覆い被さるカノン

ビール買って行こうよホテル

カノンが潤ちゃんを見て言う

目が少し濡れている

潤ちゃんもカノンの目を見てる

部屋に行こうビールあるよ

手を繋ぐ潤ちゃん

歩きながらカノンが潤ちゃんにキスをする

早く2人でなろうよ

カノンが唇を離さず言う

ブルブルする

潤ちゃんが笑う

瞼にキスをするカノン

寒いから冷たいや

2人は手を繋ぎ直して潤ちゃんの部屋へと

向かい出す

体が触れたり離れたりしながら嬉しそうに

歩いて行く

話なんか少しも途切れる様子もなく



小さな子供の目線までしゃがむカノン

バイバイ

バイバーイ

受信に立ち上がる

カフェみんなの画像

口元をきゅっと上げ削除する

ハーイ

目の前を通る女の子2人がカノンに声をかけていく

ハーイ

口元がきゅっと上がり片手を上げる

カノーンこっちに来てくれるか

店の中からマスターが呼んでいる

おい紹介するよカノンだ。

日本から来たんだジュンと一緒に働いてたそうだ。しばらくこっちに居るからって店を手伝ってくれてるんだよ。ジュンは幸せだ日本でこんないい仲間がいたんだから。あぁそうだ今度……

カウンターレジの後に潤ちゃんの写真がかけられている

客がいる店のざわめき

僕の一番好きな場所


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Cookie Cherry しら玉白二 @pinkakapappo

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