やさぐれ天使と純粋悪魔

ヒナタジャンクション

第1話 天使と悪魔

 「はい、はい… 今日のノルマは6人…と」

その天使は「上の者」の指示に死んだ目つきで相槌を打つ。死んだ目つきは今日に始まった話ではない。

「それと…天使なんだから髭くらい剃ったら? 仮にも天使なんだからさ」

(仮にもってなんだよ…余計だろ今のは)

「仮にも、は余計だったかもね。私ったら余計なことばっかり言っちゃうのかもねー」

その天使は、女体の「上の者」に少し寒気を感じながら、逃げるようにその場を後にした。

 「くだらねぇなぁ…相変わらずよぉ…」信号機に腰を下ろし、天使は顎の無精髭に右手の指を滑らせる。しばらく黄昏れていた彼は、ノルマを果たすべくおもむろに空を飛ぼうとした。すると背後から、彼にとって聞き慣れた、そして甲高い声が聞こえてきた。

「おーい!天使ー!」後ろからやって来たそれは、長めのワンピースを着た悪魔だった。

「天使って呼び方はねぇだろうよ。ルシウスだって何回も…まぁいいや」

「諦めるなよー。ちなみにあたしにはアカネっていう素晴らしい名前があるよ!」

「素晴らしいとか自分で言うなよ。そんなことより、俺今から仕事だから。じゃあな」

「あたしも着いていっていい?」

「いいわけねぇだろ、仕事中にお前にまとわりつかれたら目障りでしかないわ」

「酷くない!?てかお前にってことは、あたし以外の美魔女みたいな悪魔ならまんざらでもないってこと?引くわー」

「なんでそこで美魔女って言葉が出てくるんだよ!」

二人がこうしたやり取りをしているうちに、あっという間に「仕事現場」に着いてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る