第62話 片付ける

「なんだてめぇ?」

「さすがに見過ごす訳にはいかねえ外道がいたんでな、首を挟ませてもらうぜ。」

「なめてんのか、こら!」

「なめる?そりゃそうだろ、こんな不格好な真似してるような外道、人として最低だ。」

「ふざけるな、おいマユズミ、コイツをわからせてやれ!」

「おう、カッコつけるのは良いけど、てめぇには俺達の怖さを教えてやるよ!」

「なんだ、ナイフ一本で教われるもんなんか?」

「なめやがって!死んどけよ!」

マユズミはナイフを大きく振りかぶる・・・


「振りかぶるなよ、素人が。」

俺は懐に飛び込み顎を掌底で突き上げる。

「ぐはっ!」

そして、マユズミが思わず落としたナイフを空中で拾い、女の子を抱えているマジマに向かいナイフを投げる、それはマジマの肩に刺さる。

「ぎゃあ!いてぇ!肩が肩がぁ!!」

「うるせぇよ、騒ぐな。」


「マジマ!マユズミ!てめぇ俺達にこんな真似をして生きて帰れると思うなよ!」

マジマ達の連れと思われる奴等はそれぞれナイフを抜く。

「半端者が、お前らこそ明日の朝日を拝めると思うな。」

俺達の騒ぎに従業員達はワタワタと遠巻きで見ている。


「さて、ゴミが集まった所で聞こうか。

お前ら何処のもんだ?」

「何処の?」

「俺とやり合うんだ、何処かの代紋背負ってるんだろ?」

「はぁ?今時代紋背負ってる奴なんているわけ無いだろ。」

「つまり何も無いのにこんな真似をしたと?」

「だったらなんだよ!」

「いや、本当にチンピラだとはな・・・」


「ユウヤの旦那すみません!遅くなりやした!」

俺が呆れている中、足利組の若い衆が駆けつけてくる。

「足利組の方か?」

「へい、倉田の旦那から話は聞いております。」

「後の事は任せていいか?」

「お任せください。きっちりケジメをつけさせやす。」

「わかった、後は任せる。」

「おい、こいつらを事務所へ連れて行け!」

足利組の若い衆はマジマ達全員を連れて行く、マジマ達も明らかな極道が来た瞬間から粋がるにも止めていた。


「嬢ちゃん、大丈夫かい?」

俺はマジマに掴まっていた少女、ミサキに声をかける。

「はい・・・」

「怖かっただろ、もうあいつらはいないからな、安心して良いよ。」

「・・・う、うわぁぁぁん、怖かった、怖かったです!」

ミサキは俺にしがみついて泣き始める、俺はミサキの頭を優しく撫で落ち着かせる。


「き、きみ、さっき人を刺していたな!」

教師の一人が近づいてくる。

「正当防衛です、あなたも見たのでは?」

「いやしかしだね・・・」

「おい、イズミノ!お前助けてくれた人に何を言ってんだ!お前こそ生徒を守らずに何処に行ってたんだ!」

俺を責めるような声を上げようとしていたイズミノに生徒達から非難の声と冷たい視線が飛んでくる。

「わ、私はあいつらを何とかしようと道具をだね。」

「持ってきてないじゃないか!」

「そうだ、そうだ!」

手ぶらでいるイズミノの言葉に信憑性は無い、その間に俺は近くにいた女生徒にミサキを預けてその場を後にするのだった。

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